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『内郷綴町堀坂』(令和5年3月9日市公式SNS投稿) 

登録日:2023年3月9日

いわきの『今むがし』Vol.164

丘陵地を縫うように通じる国道6号の堀坂 〔1.50,000地形図 平(明治41年測図)  国土地理院発行〕

■地図1 堀坂〔1.50,000地形図 平(明治41年測図)  国土地理院発行〕.jpg 綴と内郷の間には丘陵地が横たわっており、谷が入り組んでいます。南北朝時代の建武4(1337)年4月、天皇に味方する南朝軍と武士に味方する北朝軍が堀坂口で激しく戦ったことが、「相馬家文書」に記述されています。

 地名の「堀坂」はこの丘陵地を越える緩やかな坂に由来しています。沿線の凡天山(ぼんてんやま)には山賊(さんぞく)が住んでいて、金品を強奪するなどの悪行で旅人を苦しめたという伝説が言い伝えられています。

 現在の道路が開削されたのは、江戸時代後期になってからでした。戊辰戦争時には、奥羽越列藩同盟軍は堀坂付近の隘路で追討軍の勢いを食い止めようとしましたが、打ち破られて後退を余儀なくされました。いずれにしても、この地形では往来に難儀し、平時でも戦時でも重要なポイントであったことが、推測されます。

 浜街道は、谷を縫うように敷設されており、明治時代以降、国道となった後も、緩やかな坂とカーブの連続は相変わらずで、交通上の隘路となっていました。明治時代後期になると、内郷や湯本では石炭開発が進み、石炭輸送が活発化していきます。また、人口が増え、往来も激しくなります。特に、大正時代末期に自動車が登場すると、見通しの悪い一帯の国道は改良が必至となっていきます。

 道路拡幅と堀坂の勾配と屈曲を緩和するための工事は、昭和16(1941)年4月に起工。戦争優先のため事業は遅延したが、それでも戦争遂行に必要な石炭開発のため道路整備が必須となり、昭和20(1945)年度に完成しました。

 国道6号の工事は昭和23(1948)年度から再開し、内郷と湯本の舗装工事は昭和27(1952)年度からスタートし、昭和28(1953)年4月に完成しました。

国道6号の歩道整備 カーブを曲がると、内郷市街。〔昭和52(1977)年2月 いわき民報社撮影〕

■写真1-2  内郷綴町の国道6号歩道整備・内郷駅に向かって見る(昭和52年2月、いわき民報社撮影).JPG

 昭和30年代以降の高度経済成長は、日本人の物資的な豊かさを促進させ、自動車が日常生活に欠かせない存在となるモータリゼーションが加速度的に進行していきます。

 内郷と湯本の間には、国道がほぼ唯一であったことから、朝夕を中心とした交通渋滞が激しくなっていきます。この間には、堀坂付近の谷間を利用して東北運輸局福島陸運支局いわき自動車検査登録事務所や平木材市場など事務所、工場、一般住宅が建って、渋滞に拍車をかけました。さらに、内郷と湯本の間には、半径500mの緩いカーブから半径100mのきついカーブまで5か所で蛇行していたことから、夜間や日中の交通事故が絶えない状況となっていきます。当時はこの区間は、スピート制限はあったものの、追い越しが解除となっていたため、自動車の正面衝突やカーブを曲がりきれず、民家に突っ込むトラックが続出しました。このため、沿線住民や交通関係者は追い越し禁止の措置や国道バイパス建設を要望しました。

国道6号常磐バイパスは平成12(2000)年に全通しましたが、国道6号関連の大規模事業が計画されていたことから、バイパス住吉交差点-常磐-内郷-平の国道6号は維持されました。(一般的にバイパスなどの新線が完成すると、従来の路線は国道から県道や市道へ、県道から市道へ、それぞれ格下げ措置)

 その後、常磐地区の国道6号立体化改良工事を経て、平成30(2018)年3月には、谷川瀬-御厩-綴-国道6号の堀坂に至る市道内郷-平線の堀坂トンネル(289m)を含む延長500m区間が開通して、利便性向上や渋滞緩和などにつながりました。この開通によって、国道6号関係の大きな整備計画は完了し、平成30年4月からはいわき駅前通りの国道399号の交差部分から北は国道399号へ、交差点以南は主要地方道いわき-上三坂-小野線へ格下げされました。

(いわき地域学會 小宅幸一)

その他の写真

国道6号の拡幅・改良工事 内郷市街の入口を北方に向かって見る。〔昭和17(1942)年 いわき国道事務所撮影〕

3■写真1-1 国道6号の拡幅・改良工事 内郷市街の入口を北方に向かって見る。 〔昭和17(1942)年 いわき国道事務所撮影〕.jpg

丘陵地の谷間を縫うように通じる国道6号〔昭和17(1942)年 いわき国道事務所撮影〕

4■写真2-1 丘陵地の谷間を縫うように通じる国道6号 〔昭和17(1942)年 いわき国道事務所撮影〕.jpg

ここから手前に向け、カーブが連続〔令和3(2021)年9月 小宅幸一撮影〕

5■写真1-3  ここから手前に向け、カーブが連続〔令和3(2021)年9月 小宅幸一撮影〕.JPG

市南北を結ぶ国道バイパスが別に完成した後も、内郷-湯本間の重要な幹線道路〔1.50,000地形図 平(平成18年更新)  国土地理院発行〕

6■地図2  市南北を結ぶ国道バイパスが別に完成した後も、内郷-湯本間の重要な幹線道路 〔1.50,000地形図 平(平成18年更新)  国土地理院発行〕.jpg

雪間の国道6号、堀坂 正面に見えるのが、凡天山〔昭和30(2021)年頃 渡辺一男氏撮影〕

7■写真2-2 雪間の国道6号、堀坂 正面に見えるのが、凡天山。〔昭和30(2021)年頃 渡辺一男氏撮影〕.jpg

歩行者の安全のため、写真右側に歩道とガードレールが確保〔昭和52(1977)年2月 いわき民報社撮影〕

8■写真2-3 歩行者の安全のため、写真右側に歩道とガードレールが確保 〔昭和52(1977)年2月 いわき民報社撮影〕.JPG

国道6号は主要地方道いわき-上三坂-小野線になったが、朝夕を中心に交通混雑は変わらず〔令和3(2021)年9月 小宅幸一撮影〕

9■写真2-4 国道6号は主要地方道いわき-上三坂-小野線になったが、朝夕を中心に交通混雑は変わらず 〔令和3(2021)年9月 小宅幸一撮影〕.JPG

市道内郷-湯本線堀坂トンネル開通式(平成30年3月、いわき市撮影)

10市道内郷-湯本線堀坂トンネル開通式(平成30年3月、いわき市撮影).JPG

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電話番号: 0246-22-7402 ファクス: 0246-22-7469

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