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『内郷御台境町新町前、平字新町』(令和4年12月7日市公式SNS投稿)

登録日:2022年12月7日

いわきの『今むがし』Vol.158

上 平城下のなかの新町(『福島の歴史地理研究』 鈴木貞夫 いわき地域学會 平成4年)
下 平町全図(8,000分の1・原寸(8千分の1×0.87、昭和7年頃、いわき総合図書館所蔵) 

1 以前、内郷御台境町としては国道6号と国道49号が分岐する御台境交差点を取り上げましたが、今回は交差点の北側に位置する御台境町新町前と隣接する平字新町を併せて紹介します。
 御台境交差点から少し平市街寄り、松ケ岡公園(松ケ台)のある丘陵地の裾野に沿って狭い道が西に向かって延びています。周辺の道路は相互交通ですがここだけ自動車1台が通れるほどの一方通行の道となっています。
 この道路は、かつて内郷市と平市の市境でもあり、平市側は平字新町、内郷市側は御台境町新町前でした。字名のとおり関わりを見みせながらも、行政上は長い間異なった区域でした。
 それは、新町の成り立ちに由来します。
 江戸時代の初め、磐城平藩10万石(後に12万石)の大名として入部した鳥居忠政は物見ケ岡の丘陵地南の低地に城下町を築き、武士、町人、職人、寺院などの町割りを配しました。主要な部分は松ケ岡と物見ケ岡、夏井川に囲まれていましたが、町割りの西側に位置する長橋から松ケ岡丘陵地に沿って足軽屋敷が道路の片側に配置されたのです。その道路は現在の常磐線・磐越東線を越えて、字大館まで続いていました。その道路の東側には水田が広がっていたのです。
 昭和30年代に入ると、平市街の拡大が顕著になって、新町前にも市街化の兆候がみえてきます。
 さらに国道49号の御台境交差点-好間が昭和28(1953)年に着工され、昭和33(1958)4月に竣工する間、松ケ岡公園下と常磐線、国道6号、国道49号に囲まれた地域(面積8.1haは昭和32(1957)10月、内郷市都市計画に組み入れられ、昭和34(1959)年度から同38(1963)年度にかけて「新町前土地区画整理事業」として施工されました。 

上 改修前の新町ガード (昭和38年9月4日付『いわき民報』
中 内郷御台境町新町前から常磐線ガードを見る・市道のかさ上げで雨天時には浸水(昭和63年9月、いわき民報社撮影)
下 新町ガード(令和2年10月、小宅幸一撮影)

2 江戸時代の足軽屋敷だった平字新町は、明治30(1897)2月に開通した日本鉄道磐城線(後の常磐線)の敷設によって分断され、その間は人が往来できるように常磐線御台境橋梁(新町ガード)が設けられました。
 また、大正4(1915)年の平郡東線(大正6年の全通で磐越東線)によって、ガードの長さは25mになりました。
 しかし、このガード、次第に沈下現象を起していくようになります。
 危険が認識されるようになったのは、大正時代末期に自動車が登場してからでした。昭和5(1930)年にはこのガードの改修について、内郷村議会議員から水戸保線事務所に陳情書を提出しています。平町議会からも同様の措置が取られました。
 平保線区では、亀裂防止などの応急措置などの補修をしたものの抜本的な解決にはならず、少しずつ地盤沈下が進み、昭和10年代からは自動車の通行が困難な状況となってしまいました。
 一方、昭和30年代に施工された土地区画整理事業後、多くの事務所や住宅が建ちましたが、新川の水害や地盤沈下によって何度も土盛りをせざるを得ない状況でした。このたび、ひとたび水害ともなると、たびたびガードに水が流れ込むようになって、人の通行すらできませんでした。この時期、橋梁の高さは建設時の2.8mから1.2mの低さとなっていたのです。
 このため、国鉄、平市、内郷市が経費を分担して、高さ3.5mを確保するため、道路面を掘り下げるとともに取り付け道路を改修、さらに排水ポンプや排水路の設置などを、昭和39(1964)年に施工して、ようやく自動車が通行できるようになりました。
 長い間、二つの国道と鉄道に囲まれた3角地帯の内郷御台境町新町前と平字新町。市境、水害、ガード沈下などにさまざまな自然・社会に波に洗われながら、今は静かな時を刻む市街です。 

(いわき地域学會 小宅幸一)

その他の写真

内郷御台境町、新川、御厩町を松ヶ岡公園から見る(昭和37年、桃井広也氏撮影)

 内郷市街を松ケ岡公園から見る(平成8年、いわき市撮影)

内郷市街を松ケ岡公園から見る(平成8年、いわき市撮影)

 北側から見る新町ガード(令和2年10月、小宅幸一撮影)

北側から見る新町ガード(令和2年10月、小宅幸一撮影)

 平市街(北目村)の地籍図・土地利用図(明治18年)『福島の歴史地理研究』から引用

平市街(北目村)の地籍図・土地利用図(明治18年)『福島の歴史地理研究』から引用

 新町前上空から平市街地を俯瞰(昭和50年代、いわき市所蔵)

新町前上空から平市街地を俯瞰(昭和50年代、いわき市所蔵)

 平市街地を西方上空から俯瞰(平成8年10月、いわき市撮影)

平市街地を西方上空から俯瞰(平成8年10月、いわき市撮影)

 磐越東線の蒸気機関車・内郷御台境町(1)(昭和45年3月、遠藤啓氏撮影)

磐越東線の蒸気機関車・内郷御台境町(1)(昭和45年3月、遠藤啓氏撮影)

内郷御台境町新町前の常磐線ガート下・市道かさ上げで雨天時には浸水(昭和63年9月、いわき民報社撮影)

内郷御台境町新町前の常磐線ガート下・市道かさ上げで雨天時には浸水(昭和63年9月、いわき民報社撮影)

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総合政策部 広報広聴課

電話番号: 0246-22-7402 ファクス: 0246-22-7469

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