『平字十五町目』(平成30年6月13日市公式Facebook投稿)
更新日:2018年6月13日
いわきの『今むがし』Vol.96
上:十五町目時代の郡役所庁舎(大正時代、絵葉書)
下:平警察署と国道6号〔昭和45(1970)年3月、いわき市撮影〕
「十五町目(じゅうごちょうめ)」はとても興味ある地名ですが、由来は別の機会に譲るとして、ここでは十五町目の移り変わりをみていきましょう。
十五町目は、江戸時代から明治時代にかけて、平市街の外側に位置し、水田が広がっていました。当時は菩提院のあった菩提院町が街外れに位置していましたが、一般の人には難解な呼び方であったこと、寺の移転が進められていたこともあって、字名改称が行われました。新しい地名は「南町」と変更され、たちまちカフェーやバーなどの繁華街が成立しました。
これによって、十五町目が平市街の外縁部となりました。ここに平字田町から移転したのが、石城郡役所でした。石炭産業などの発達による鉄道輸送の活発化や平郡東線(後の磐越東線)の開通で平駅の拡張が必至となり、これと接していた郡役所の建物が駅の拡張を妨げる状況となったためです。
転居候補先としていくつか挙げられ、南町付近が有力視されました。郡会議事堂の西隣で、前方は道路、後方は新川べりの道路に面し、交通の便が良いこと、敷地は田と墓地跡(菩提院が移転)で、洪水にならないよう盛り土が施してあることなどが決め手となったのです。その場所は、現在の銀座通りの北側から、ちょうど真南の平和通りの南側、現在の国道6号とその南側に位置している平十五町目駐車場の一部です。
こうして大正4(1915)年9月、新しい郡役所は字十五町目31番地へ移転しました。なお、平土木監督署は、大正10(1921)年に郡役所敷地の一角に建設して、後の地方事務所の進出を促すことになります。
その後、郡制そのものは大正12(1923)年3月で廃止となりましたが、石城郡役所には猶予期間が与えられ、廃止となるのは大正15(1916)年6月のことでした。
廃止後、郡長会議において旧庁舎の利用法が協議され、この結果、郡役所と関わりのある町村各種団体などに無料で貸与することと決し、郡役所の東側に位置する建物に農業団体や土木団体などが入居しました。
同時期の昭和4(1929)年9月、旧郡役所の庁舎を改造して平警察署が移転(同年12月に移庁式を開催)しました。このことによって、各種団体は、隣接する元郡役所官舎(戦後平駅前通りの開設で南東側移転し、後の消防署へ転用)を改造して入居することで収まりました。また、平警察署の武徳道場が狭く十分な稽古ができないことから、警察署に隣接して、昭和13(1938)年、平武徳殿が篤志家によって建設(現市平十五町目駐車場の西隣)され、完成後、福島県に寄贈されました。
市平十五町目駐車場〔平成30(2018)年6月、いわき市撮影〕
郡役所廃止後、郡役所の業務は町村に移行しましたが、昭和時代に入ると、事務量が増え、かつ複雑化して、次第に県と市町村の中間行政機関の必要性が唱えられるようになります。
まず昭和6(1931)年に平税務出張所(後に石城財務事務所)が平警察署会議室の一部を借用して、主として県税の徴収に当たります。これを契機に、林産物検査平支所など平市街に散在している県の各事務所、出先機関を集める方向に動いていきます。こうして、昭和17(1942)年7月、県の地方連絡機関として会議室を改造して「石城地方事務所」が開庁しました。
その後、戦争を経て、同事務所は昭和21(1946)年2月、字十五町目の場所から移転していきます。
平警察署は昭和27(1952)年に改築、昭和31(1956)年3月に増築。警察機構を変えながら、昭和45(1970)年4月に内郷御厩町地内に「いわき中央警察署」として移転するまで維持されました。
一方、平消防署は、団体事務所が間借りしていた平警察署の建物を若干南東に移動、独立させて昭和26(1951)年に発足。このときに平駅前通りの開削に合わせて、道路に面した位置取りとなり、同年12月に3階モルタル造りに改築しました。
しかし、老朽化と手狭さにより、昭和58(1983)年に旧平第三小学校跡地に消防統合庁舎・平消防署として移転しました。
こうして、平警察署と平消防署のまとまった面積の跡地が残されました。国道6号と平(現いわき)駅前通りに隣接する、交通の便が良い場所に位置しているだけに、多くの人から跡地利用が着目されました。先に空き地となった平警察署の跡地には、所有者の県が統合出先機関の建設を検討していましたが、字梅本に建設されることが決まり、断念。その後もさまざまな案が検討され、消防署跡地も加わって開発対象区域は3,669.05㎡となりました。
最終的に、平市街の駐車場不足を解消するため、市が県有地(2,869.9㎡)を買い取り、平成4(1992)年8月、「市営平十五町目駐車場」(駐車収容数131台)としてオープンさせました。
字十五町目は石城郡役所が設置されて以来、官公庁が長年にわたり配置されてきました。しかし、平市街の商業発展と「クルマ社会」はこれまで街のあり方を大きく変えました。その歴史的過程をみるとき、字十五町目の地には街のあり方や変容が象徴的に凝縮されていることがわかります。
(いわき地域学會 小宅幸一)
その他の写真
石城郡役所「国産奨励勧業博覧会記念写真帖」(大正14年4月、斎藤写真館)
平警察署火の見櫓から見た平市街・中央右の建物が警察署(昭和13年、三井慎一郎氏提供)
平警察署(昭和30年代、長谷川達雄氏撮影)
平消防署・平字十五町目(昭和43年10月、いわき市撮影)
平消防署・平字十五町目(昭和40年代、長谷川達雄氏撮影)
平字十五町目の平警察署跡・右は武徳殿、後方は松村病院(昭和52年3月、いわき民報社撮影)
市営平十五町目駐車場オープン式(平成4年8月、いわき市撮影)
市営平十五町目駐車場を西側から見る(平成4年8月、いわき市撮影)
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