『平月見町通り』(令和2年7月15日市公式SNS投稿)
登録日:2020年7月15日
いわきの『今むがし』Vol.137
上 新川に架かる月見橋・北白土に向かって見る(大正時代、真木隆四郎氏撮影)
下 現在の月見橋付近(令和2年3月、いわき市撮影)
江戸時代、平市街は、本町通りを中心に各地域を結ぶ三坂道、片浜道が本町通りから分岐していました。
このうち五町目から分岐していたのが片浜街道・鹿島街道で、本町通りに連なる新川町には商家が立ち並んでいました。
本町通りのように、豪商が並ぶ派手さはありませんでしたが、旅人などが気軽に立ち寄る雰囲気と活況があふれていました。新鮮な魚や野菜などを運んできた行商、荷馬車が、本町通りに入る前にひとやすみし、小腹を満たす場所でした。
それでも、新川(現新川緑地)にかかる月見橋を越える月見町あたりになると家もまばらになり、さらに道をたどり古川(現新川)を越えると、見渡す限りの田んぼが広がっていました。
この一帯が大きく変化するきっかけとなったのが、昭和4(1929)年に月見町の南域・字三倉に進出した片倉磐城製糸(後の片倉製糸)工場です。
工場設立には地元住民が関わっていたこともあって、糸繰りの女子工員などが花見、盆踊り、運動会を通じて交流しました。
ふたたび変化したのは、昭和41(1966)年に平と小名浜を結ぶ新しい県道(鹿島街道)が駅前から南方に向け完成したことでした。このことにより、これまでの新川町・月見町通りの重要性は低下していきました。
さらにこの通りを脇役に追いやったのは、この通りと並行して東方に昭和45(1970)年に南白土と正内町を結ぶ新しい道路(後に平東大通りと命名。この道路の延長上に昭和63年3月、若葉台-南白土が完成、現主要地方道小名浜-平線へ)が完成したことでした。
上 市道新川町-谷川瀬線の拡幅整備前を国道6号に向かって見る(1)(平成11年2月、いわき民報社撮影)
下 市道新川町-谷川瀬線の拡幅整備後を旧国道6号に向かって見る(1)(令和2年3月、いわき市撮影)
正内町と南白土を結ぶ通りが鹿島街道に位置づけられると、沿線には商店が進出。昭和61(1986)年3月に商店会が結成されたのを機に、「平東大通り」と名付けられて、メイン通りになりました。
昔からの月見町通りは、平市が昭和33(1958)年に道路拡幅を主眼に都市計画道路新川町-谷川瀬線としましたが、具体策が進まないままに歳月が過ぎていきました。その後、平成7(1995)年度から行政と地元住民のなかで協議が始まり、同計画が再スタートしました。
地元住民は既存道路の両側拡幅を要望し、平成11(1999)年には「都市計画道路新川町-月見町通り道路拡幅建設委員会」を発足させて、“歩いて楽しい街並みづくり”も同時に模索していくことを決めました。
このような動きのなか、市は平成12(2000)年に「いわき市景観を守り育て創造する条例」を制定し、このなかで「重点的に景観形成を図る必要のある地区を指定し、(中略)個性豊かなまちづくりを進める」を定めており、建物の形態や色彩の統一感、屋外広告物の設置基準に配慮した基本計画・形成基準を設けて、都市街路としての景観魅力アップにつなげることは、同委員会の方向性と合致するものでした。こうして、通りの愛称は平成13(2001)年に「月見町新川町通り」と決められました。
市は平成15(2003)年8月、同条例に基づき「月見町新川町通り(国道399号〔旧国道6号〕から新田橋前まで約650mの両側30m)」を、市内で初めての景観形成重点地区に指定。道路に隣接する建築物が一斉に建て替えられるため、地元住民組織「まちづくり建設委員会」を発足して、街並みの整備をめざしました。
平成20(2008)年度から本格工事が始まり、対象の650mを含む都市計画道路新川町-谷川瀬線は平成27(2015)年3月に完成。以後、新しいまちづくりが始まりました。
(いわき地域学會 小宅幸一)
その他の写真
上 市道新川町-谷川瀬線の拡幅整備前を国道6号に向かって見る(2)(平成11年2月、いわき民報社撮影)
下 市道新川町-谷川瀬線の拡幅整備後を旧国道6号に向かって見る(2)(令和2年3月、いわき市撮影)
上 市道新川町-谷川瀬線の拡幅整備前を国道6号に向かって見る(3)(平成11年2月、いわき民報社撮影)
下 市道新川町-谷川瀬線の拡幅整備後を旧国道6号に向かって見る(3)(令和2年3月、いわき市撮影)
上 市道新川町-谷川瀬線の拡幅整備前を国道6号に向かって見る(4)(平成11年2月、いわき民報社撮影)
下 市道新川町-谷川瀬線の拡幅整備後を旧国道6号に向かって見る(4)(令和2年3月、いわき市撮影)
上 平字月見町をいわきサティ側交差点から見る(平成15年4月、いわき未来づくりセンター撮影)
下 平字月見町をイオンいわき店側交差点から見る(令和2年3月、いわき市撮影)
上 平字新田前、三倉をいわきサティ側交差点から見る(平成15年4月、いわき未来づくりセンター撮影)
下 平字新田前、三倉をイオンいわき店側交差点から見る(令和2年3月、いわき市撮影)
愛谷江から新川を落とす精米用水車・平字三倉(大正時代、真木隆四郎氏撮影)
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