その34 『市役所本庁舎は、こうして建設されました(1)』(平成29年1月13日市公式Facebook投稿)
登録日:2017年1月13日
「市役所本庁舎は、こうして建設されました(1)」
「いわき市が誕生して50年、市役所の建物も築50年かぁ…」と思われている方はいませんか???それは、間違いです!いわき市平字梅本21番地に所在する、いわき市役所本庁舎は、昭和48年3月に完成、築43年を迎えた建物です。
今回と次回は、市発足から市庁舎が完成するまでの6年5か月間のドラマ(!)に迫ってみたいと思います。
いわき市は、昭和41年10月に14市町村が、対等合併(どの市町村も吸収されることなく対等の立場で合併し新市となる)して誕生しましたが、合併する市町村にとって、新市の本庁舎の所在地がどこになるかは、重大な問題でした。本庁舎は市のシンボルであり、業務の面でも中枢機能を持つことから、その所在地こそが市の中心地になるという意識を各市町村は持っていました。特に平市、磐城市(現在の小名浜地区)、勿来市、常磐市の主張は相当に強く、昭和38年から審議を重ねてきた常磐地方市町村合併促進協議会でも結論を出せずにいました。
本庁舎の位置のほかにも、合併にあたっては、そもそもいつ合併をするかという時期の問題、新しい市の名称、財政経過措置期間(主に予算面で旧市町村の事情を調整しながら新市の組織に移行するための期間。いわき市の場合は、昭和43年度末までの2年6か月間設けられた。リレーのバトンタッチになぞらえて「タッチゾーン」ともいわれる)の設定内容、各市町村で所有する財産の処分についてなど、協議を重ねてもなかなか決められない項目がいくつもありました。
そのため、これらの項目については、市町村の上位組織にあたる、県議会の特別委員会から早期決着に向けた提案がありました。本庁舎については「(仮の庁舎を)平字三崎1番地(現在の平中央公園の場所、県立平商業高等学校の旧校舎を転用)におく。ただし恒久的な位置は、新市発足後適当な時期に定める。その時期、方法などについては、県及び県議会に一任する」という調整案で結論付けられ、ようやく合併へと進んでいきました。
市発足後、市は財政経過措置期間中に、新しい行政運営体制を順次整えましたが、本庁舎建設については結論が出ないまま、昭和44年3月の同期間終了を迎えました。大和田弥一市長は、市議会で本庁舎建設の話題が登場した際に「まだ機が熟してないということを私は常に申し上げているのであります」と答弁しています(昭和44年3月定例市議会)。
本庁舎の位置を決めるにあたって、市は合併前からの市民の意思を尊重しつつ、都市計画の観点から将来のいわき市の都市像を探っていました。全国的にも例が少なかった広域合併を科学的な視点から検討しようと、東京大学工学部都市工学科の高山研究室に調査研究を委託、昭和43年9月に「いわき市都市整備基本計画書」(通称「高山レポート」)がまとめられました(東京大学名誉教授の高山英華(たかやまえいか)氏は、東京五輪や大阪万博の施設計画、筑波研究学園都市の計画などにも携わった都市計画の権威)。
高山レポートでは、本庁舎の位置について、道路交通の便の良いことや大規模駐車場が確保できることなど、近く訪れる本格的な車社会への対応を促した上で、その候補地に(1)平市街地(仮庁舎付近)、(2)福島高専周辺、(3)平と内郷の中間丘陵地をあげました。
この3つの案から読み取れる通り、これ以降始まる市庁舎位置決定の議論は、既存市街地を活かす案と、まったく新しい街を大規模開発で生み出す案の比較検討が主となっていきます。
高山レポートがまとまってから8ヶ月、合併時にいわれた「適当な時期」がいよいよ到来します。
昭和44年6月定例市議会、大和田市長は所信表明の中で「市民の庁舎建設に対する世論は熟しつつあると判断し…(中略)…財政の見通し等からも現時点において庁舎建設の具体的構想等を検討すべき時期が到来した」と述べました。続いて、関連する議員提案「庁舎建設に関する事務調査」と「庁舎建設調査特別委員会の設置」があって可決、特別委員会の委員に22名の市議会議員が選任されました。
昭和44年7月22日、庁舎建設調査特別委員会の第1回会議が開かれます。そこでは、「建物より庁舎の位置の調査が先決」という意見が多数を占め、同委員会の目的は、合併経過中のことを考慮しながら位置決定のための調査を行うこと、と決まりました。
合併前からの重要課題である庁舎建設がいよいよ動く!と、当時、市民の関心もかなり高かったようで、新聞では「市民としても最も注目すべき段階にはいった」と報じられました(昭和44年7月22日付『いわき民報』)。
次回は、庁舎建設調査特別委員会による本庁舎建設地の具体的検討作業から、建設、落成までをたどります。お楽しみに♪
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