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第46回吉野せい賞/第47回吉野せい賞作品募集ポスター受賞作品が決定!!

更新日:2023年10月17日

第46回吉野せい賞

吉野せい賞応募数及び選考委員

  • 応募総数
    35編
    ジャンル別内訳 小説:29編、童話:3編、戯曲:1編、ノンフィクション:2編

  • 選考委員
    鈴木 俊之、永沼絵莉子、福住 一義、室拓、吉田 隆治(50音順)  

 

選考結果

準賞

 タイトル  「ひと夏の汗(ひとなつのあせ)」 (小説)  

 作者名   関口 卓男(せきぐち たくお) 

【あらすじ】
 佐山翔馬は高校三年時の就職活動や大学受験で失敗し、父の知人のコネで入社した会社でも上手く行かず、失業状態で人との繋がりも希薄な生活を送っていた。二十歳の夏、高校の同級生である曽我に誘われ、道路工事作業員のアルバイトを始める。初めての肉体労働や人間関係の変化の中で、翔馬は自分自身を見つめ直していく。


【選評】
・主人公の日常を淡々と描く文体に引かれた。

・ブルーカラーのアルバイトの現実を、これでもかこれでもかと描写することで、逆に人柄が浮き立ってくる。

・細部にリアリティがあり、文章が生きいきとしている。

 

奨励賞 

 タイトル  「スリーベースヒット(すりーべーすひっと)」 (小説)  

 作者名   沢 葦樹(さわ あしき)

【あらすじ】

 高校時代、野球部の万年補欠だった鈴原陽は社会人になり、チームメイトだった近藤俊樹と約十二年ぶりに再会する。当時中心選手だった俊樹は最後の大会で力を発揮できず、その後は社会人野球を続けていた。再会をきっかけに俊樹はプロテストを受ける決心をする。年齢の壁や迷いを乗り越えながら、長年の努力と研究の成果で「合格」の知らせを手にした。

【選評】

・野球を熟知した、専門的な視点から人間を描いていて面白い。

・野球の魅力が本塁打ではなく、三塁打(スリーベースヒット)にある、というところに新しさを感じた。

 

奨励賞

  タイトル  「沈黙のブラック・バード(ちんもくのぶらっく・ばーど)」 (小説) 
  作者名   山田 洋平 (やまだ ようへい)


【あらすじ】

 二〇一三年、いわきから東京都内の大学へ進学した草野美鈴は、アルバイト先のコンビニでたむろしている高校生の橋本萌子と出会う。震災時に持病の喘息の悪化を心配した母と共に郡山から避難してきた萌子は、ビートルズ好きの両親の影響からギターの弾き語りをしている。二人はすれ違う萌子の両親の仲を取り持つため、元・ビートルズのポール・マッカートニーの来日公演のチケットを手配する。仲直りした萌子の両親とともに萌子の歌う「ブラック・バード」を聴きながら、美鈴はここが新たな自分の居場所であると実感した。

【選評】

テレビドラマを見るように物語が展開している。

構成や盛り上げ方がうまい。

 

奨励賞

  タイトル  「幸せの紅い靴(しあわせのあかいくつ)」 (小説) 
  作者名   滝 英長 (たき ひでなが)


【あらすじ】

 わたしは七十歳を越えたある日、長い友人である美智子の死亡通知状とともに、彼女の息子から「母は、貴女に紅い靴を送ってくれ、と言って亡くなりました」という手紙を受け取る。それを見たわたしの脳裏に、若い頃に店先で眺めていた赤い靴への憧れ、それを手にして東京へ駆け落ちしてしまった美智子との思い出が蘇った。その紅い靴の記憶は自分と友人の人生をあたたかく肯定するのだった。

【選評】

回想物としてよくまとまっている。

作者は男性だが、報われない女性を描くのがうまい。

 

青少年特別賞 

  タイトル  「放課後、キミ色に染まって(ほうかご、きみいろにそまって)」 (小説)   
  作者名   渡部 綾音(わたなべ あやね)


【あらすじ】
 高校一年生の莉央は読書好きで、しかしなかなか気の合う友達ができず、高校生活を楽しいと感じられずにいた。放課後の図書館にいつもいる三年生の浜口先輩のことが気になりながらもずっと声をかけられずにいたが、ある日決心して声をかける。彼はアルビノの特徴的な外見から周囲の噂に晒され、家族からも疎まれていた。その悩みを聞いて心を通わせた二人は、図書館での交流を重ね、ついに両思いになる。

【選評】

あこがれやいろいろな思いを形にした。

作品として一つの世界をつくり上げ、まとまっている。

 

青少年特別賞 

  タイトル  「ビー玉(びーだま)」 (小説)   
  作者名   三原 由莉(みはら ゆり)


【あらすじ】
 母子家庭で育つ中学二年生の悠は、家を不在にしがちな母の代わりに弟の翔の世話をしている。夏休み中も翔とともに駄菓子屋の手伝いをして小銭を稼ぎ、周囲の子供やその親の姿を見ながらも、自分の境遇や母に対しての想いを言葉にできずにいた。ある日、小学生の時の担任の江崎と再会する。当時から悠の家庭環境を気にかけていた江崎の言葉をきっかけに、母へ自分の気持ちを伝える決心を固めた。
 

【選評】

大人、弟と兄、先生などとの関係・距離感をうまくとらえている。

リアルな視点で書かれているのが好ましい。 

 

総評

 

・今回は吉野せい賞に28編、中学生以下の青少年特別賞に7編、計35編の応募があった。応募総数は前回38編、前々回36編と、この3年は同程度で推移している。

・内訳は小説29編、童話3編、戯曲1編、ノンフィクション2編である。各選考委員選出による一次通過作品15編(吉野せい賞対象12編、青少年特別賞対象3編)について協議した結果、準賞1編、奨励賞3編、青少年特別賞2編を選出した。

・残念ながら今回も正賞に該当する作品はなかった。しかし、それなりに力のある作者の応募が続いているため、全体的には高い水準が維持されている。

・前回同様、一次通過作品15編のうち奨励賞受賞経験者の作品が5編あった。これは毎回議論になることだが、選考には厳しい制約がある。奨励賞受賞者には準賞レベル以上の作品が、準賞受賞者にはその上の正賞レベルの作品が求められる。そこまで達していなければ、たとえほかの作品より優れていても賞の対象からはずされる。今回も奨励賞経験者の4編がこの規定によってはずされた。

・この4編の中には中央の雑誌に載ってもおかしくないようなエンターテインメント系の作品があった。吉野せい賞はある意味、ローカルな性格を有しており、そのなかで作品の質をどうとらえるかは、簡単に結論の出る問題ではない。そのゆらぎの中で議論が重ねられたことを記しておく。

・青少年特別賞関係では今回特に、性や性教育、ジェンダー、ヤングケアラーといった、時代と社会が直面している課題や問題を等身大で描いた作品に、これまでとは違った手ごたえを感じた。(うち1編は一般の作品として議論された)

・10代の応募者は高校生が4人、中学生が6人、最年少の小学5年生が1人と、全応募者の3分の1近くを占めた。若い才能を発掘する賞の目的からしても好ましい傾向ではある。この勢いが持続することを期待したい。

  

作品の掲載

  受賞作品は、総合文藝誌「風舎 第18号」(令和6年3月発行予定)に掲載する。(予定)


 

第47回吉野せい賞作品募集ポスター

吉野せい賞作品募集ポスター応募数及び審査委員

 応募総数 30点

 審査員 植田 玲子、佐久間 静子 (50音順)

 

審査結果

最優秀賞 

仙坂 優衣(せんざか ゆい)   いわき市立小名浜第二中学校2年

令和6年度の吉野せい賞作品募集の広報用ポスターとして使用します。

最優秀賞ポスター

「かこう、自分の物語。」

【講評】
 輝きを放つペンを差し出す少女のまっすぐな視線からは、今まさに「物語」を書こうとする強い気持ちが感じられる。漆黒の宇宙と原稿用紙が最背面に配され、前面に向かって地球、木星、土星、大きく空に向かうクジラ、小魚の群れは蝶たちも連なり、吹く風が草原を揺らし花びらを舞い上がらせる。最前面に描かれた白獣の視線が少女の視線と重なる。画面に重層するこれらのモチーフたちが、これから綴られるであろう壮大な物語を予感させる。句読点を入れた「かこう、自分の物語。」と文章仕立てにした標語も、吉野せい賞の内容をよく表して効果的である。 

優秀賞 

新田 和奏(しんでん わかな)   いわき市立平第二中学校3年

優秀賞ポスター1

「君の想いが世界を彩る」

【講評】
 少女が見上げる視線の先には、空とも海とも見える時空が広がり、光芒に照らされたクラゲがゆらゆらと舞う。クラゲの頭部から立ち上がった虹は、少女の側に舞い落ちる。それとも彼女の側から、クラゲの世界に。「書き手」と「書かれた世界」を結ぶ「虹の橋」を行き来しつつ物語がつくられる様子を示唆しているようで興味深い。標語の文字色に背景と同系の青を選び白の縁取りで強調しているところに作者の意図を感じるが、もう一歩、文字を目立たせる工夫が望まれる。

優秀賞 

鈴木 瑠奈 (すずき るな)   いわき市立平第三中学校2年

優秀賞ポスター2

「壮大な物語を描こう」

【講評】
 背景の地球、月、星々、銀河鉄道、主人公の少女、標語がバランスよく配置されている。また、机の上にひろげられた原稿用紙や本のページのひらひらとした動きと女の子の髪が揺れる様子が軽やかで、薄塗りで仕上げられた画面は全体として爽快で伸びやかであり好感が持てる。ここからさらに、配色、陰影の表現などでメリハリを付ければ、薄塗りの良さを生かしつつ「一目で内容を知らせ、注目を集める」広報用ポスターの機能を満たす良い作品になるだろう。

奨励賞

 
  • 中央台南中学校3年   安孫子 凛伽 (あびこ りんか) 
     
  • 藤間中学校3年   阿部 優空 (あべ ゆうあ)
     
  • 小名浜第一中学校2年   片寄 桜愛 (かたよせ ほのあ)
     
  • 中央台北中学校3年   酒井 あかり(さかい あかり)
     
  • 平第二中学校3年   水竹 心 (みずたけ こころ) 
     

総評

 今年度も吉野せい賞作品募集ポスターへ多くの応募があったことを嬉しく思っている。文章のイメージを広げ、文を書く楽しさを表現する素晴らしい作品が多かった。

 ポスターのイラストは原稿用紙や蝶、虹が描かれているものが多く、文章を書く大切な要素が良く表現されている。表現技法としてフロッタージュやグラデ―ションを使い、効果を上げている作品もあった。全体として、何を伝えたいかの意図が見る側にストレートに入ってくる作品が多かった。

 受賞作品は、学生らしい主人公のイラストも美しく、明朝体とゴシック体の文字も基本がしっかりしている。レタリングもポスターの重要な部分であるので、バックから文字が目立つ工夫が必要である。

 次年度も新しいイメージからの表現を期待している。

 

ポスター展

  巡回展示日程(全作品を展示します)

  1. 令和5年11月3日~令和5年11月26日 いわき市立草野心平記念文学館 

  2. 令和5年12月6日~令和6年1月4日 いわき市立いわき総合図書館

  3. 令和6年1月20日~令和6年2月18日 いわき・ら・ら・ミュウ 2階市民ギャラリー 

このページに関するお問い合わせ先

観光文化スポーツ部 文化交流課

電話番号: 0246-22-7544 ファクス: 0246-22-1243

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