第47回吉野せい賞/第48回吉野せい賞作品募集ポスター受賞作品が決定!!
更新日:2024年10月16日
第47回吉野せい賞
吉野せい賞応募数及び選考委員
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応募総数
31編
ジャンル別内訳 小説:25編、童話:1編、ノンフィクション:5編
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選考委員
鈴木 俊之、永沼絵莉子、福住 一義、吉田 隆治(50音順)
選考結果
吉野せい賞
タイトル 「カノープスを見ていた少年たち(かのーぷすをみていたしょうねんたち)」 (小説)
作者名 沢 葦樹(さわ あしき)
【あらすじ】
夏生にとってカノープスは憧れの星である。それはかつて夏生と同期入社した厚也が教えてくれた星だが、しかし彼は夏生と夢を語り合ったあと事故で亡くなってしまった。それから二十年経ち、夏生は学生時代からの天文ファンである光二やその仲間とともにカノープスを見るツアーを計画する。旅先の星空の下で、夏生は厚也の面影のある少年と出会う。
【選評】
・一般にはよく知られていない星のカノープスに魅せられた人間の世界を描いており、既視感がなく新鮮で壮大。
・亡くなった元同僚の甥である少年の登場も無理がなく、リアリティがある。
・ここまで物語を紡いだ想像力と構想力がすごい。
準賞
タイトル 「災禍(さいか)」 (小説)
作者名 一橋 清高(いちはし きよたか)
【あらすじ】
天明二年、藩主の代わりに耳や目となって藩領内や遠国の探索などを勤める耳目方 となって三年目の数馬は、藩主の順徳に江戸への参勤交代の供を命じられる。初めて藩領の外に出た数馬が江戸の地で知見を深めていく中、国元では“天明の大飢饉”が始まり、順徳は藩の食料の確保に苦心する。さらに江戸の地震、浅間山の噴火と災害が続き、浅間山への遠国御用を命じられた数馬はそこで悲惨な光景を目にする。重なる災害の中で、耳目方、藩主とさまざまな立場で翻弄される当時の社会を写し出した。
【選評】
・時代的な要素をよく調べて、無理のない範囲で関連付けをしている。
・分量、技法はもちろん、全体の構成もよくできている。
・外様小藩の「耳目方」が殿様の目となり、耳となる設定がおもしろかった。
奨励賞
タイトル 「空色チェリー(そらいろちぇりー)」 (小説)
作者名 伊藤 晴美(いとう はるみ)
【あらすじ】
中学三年生の奈津にとって、東京から転校してきた智絵里は周囲とは違う憧れの存在だ。二人は「ナッツ」「チェリ」と呼び合い、友情を深めていく。やがて智絵里が転校することになった理由を打ち明けられた奈津は、傷つきながらも智絵里や周囲の友人への想いを見つめ直し成長していく、中学生最後の一年間の物語。
【選評】
・文章が軽快でテンポがよい。
・応募作品の中でも既視感がなく新鮮。
・思春期の心情を細やかに表現している。
奨励賞
タイトル 「巣立つ者らが見る夢は(すだつものらがみるゆめは)」 (小説)
作者名 松井 高史 (まつい たかし)
【あらすじ】
隅田川炭鉱閉山後の昭和三十年代後半から四十年代、生真面目で正義感の強い小学六年生の利夫は友人同士の力関係に悩みながら、中学生となる。中学二年の夏に自転車 旅行を決行し、その後も高校生になって手に入れたバイクでみちのくの旅に出る。旅先での様々な出会いや、中学時代の恩師との思い出を懐旧の念を込めて描く。
【選評】
・体験からくるリアルさがあって、等身大の少年を感じる。
・団塊の世代には共通の心的風景。当時の若者気質をよく表現している。
・筋立てと内容には既読感がある。
総評
・今回は吉野せい賞に30編、中学生以下の青少年特別賞に1編、計31編の応募があった。この3年の推移をみると、応募総数は前々回38編、前回35編と漸減傾向にある。しかし、過去に受賞歴のあるベテランだけでなく、若い書き手も加わり、内容的には読みごたえのある作品が多かった。
・内訳は小説25編、童話1編、ノンフィクション5編である。各選考委員選出による一時通過作品9編(吉野せい賞対象8編、青少年特別賞対象1編)について協議した結果、せい賞(正賞)1編、準賞1編、奨励賞2編を選出した。せい賞は第44回以来3年ぶり、せい賞・準賞の同時選出も同じく3年ぶりである。青少年特別賞は、今回は見送られた。
・青少年特別賞の対象作品1編を除く30編の作者をみると、準賞受賞者が1人、奨励賞受賞者が11人、青少年特別賞受賞者が1人の計13人である。応募全体の半数近くは一定の評価を得た作者の作品ということになる。
・これは毎回指摘していることだが、選考には厳しい制約がある。奨励賞受賞者には準賞レベル以上の作品が、準賞受賞者にはその上のせい賞レベルの作品が求められる。この規定に従って各委員が候補3編を選んだ結果、吉野せい賞対象の一時通過作品8編のうち受賞経験者は5人(いずれも奨励賞)に絞り込まれた。
・吉野せいという作家、あるいは地方自治体主催の文学賞という性格からか、いわきを、いわきの人間を題材にした作品が見られるが、評価の基準はあくまでも人間がどう描かれているかだろう。せい賞を受賞した作品は、南の星カノープスにいわきと千葉の人間を重ねた物語だが、そのローカル色を見事に織り上げたといってもよい。カノープスを観察できる北限の地はいわき――これも効いている。
・江戸時代の飢饉を扱った準賞作品「災禍」は、小藩の殿様に仕える「耳目方」という情報収集役の存在が新鮮だった。奨励賞の2編にはさらなる挑戦への期待が込められている。
作品の掲載
吉野せい賞受賞作品「カノープスを見ていた少年たち」は、総合文藝誌「風舎 第19号」(令和7年3月発行予定)に掲載する。(予定)
第48回吉野せい賞作品募集ポスター
吉野せい賞作品募集ポスター応募数及び審査委員
応募総数 33点
審査員 竹内 啓子、佐久間 静子 (50音順)
審査結果
最優秀賞
細谷 菜友(ほそや なゆ) 平第二中学校2年
令和7年度の吉野せい賞作品募集の広報用ポスターとして使用します。
「この想いを物語に」
【講評】
セーラー服を着た少女のつややかな黒髪が印象的な作品である。後姿の少女はどんな表情をしているのか、つい想像が膨らむ。鉛筆を手にした少女の向こう側で空を舞う白紙の原稿用紙を見れば、ここから生まれる未知の物語への期待を抱かずにはいられない。モチーフも色数もそう多くはないため静けさ漂う作風なのだが、そんな画面の右上に配された大きな月が、原稿用紙に向かう少女と創作の世界を明るく照らす光景に心惹かれた。また、何よりポスターの重要な要素であるレタリングが優れており、授賞の決め手となった。
優秀賞
藁谷 唯花(わらがい ゆいか) 磐城学芸専門学校1年
「貴方だけの物語を創ろう」
【講評】
色鮮やかな作品が多いなか、淡いブルーを基調とした柔らかなタッチのこの作品に目が留まった。画面の中心には星らしきものが大きく描かれ、その周りを原稿用紙や本、小さな星々、鯨や竜、クラゲ、鳥や花などが取り囲む。それらはまるで中心の星から飛び出して空を自由に飛び回っているようにも、星に吸い込まれていくようにも見え、画面全体に躍動感を与えている。標語の配置とデザインにはもう少し工夫が必要だが、ペンを持つ人のあふれんばかりの想像力をみずみずしく表現した秀作である。
優秀賞
松本 菜花 (まつもと なのは) いわき総合高校1年
「夢の地図を描こう」
【講評】
海中でカメの背中に乗るセーラー服姿の少女が主人公で、若々しい活力に満ちたユニークな作品である。何より少女の明るい表情がパッと人目を引く。カメの位置と角度が絶妙で力強く、リアルで丁寧な描写が際立っている。ただ、そんなカメに乗った少女の座り方が少々不自然に見受けられるのが残念。カメに腰かけ一体となって泳ぐ様子をしっかり表現できれば説得力が増すのではないだろうか。キャッチコピーは明瞭で読みやすく、絵とのバランスも良い。
奨励賞
- 磐城学芸専門学校1年 志賀 彩音 (しが あやね)
- 磐城学芸専門学校1年 吉田 夢々 (よしだ むむ)
- 平第二中学校3年 白井 結 (しらい ゆい)
- 平第二中学校2年 小松 璃子 (こまつ りこ)
- 好間中学校2年 本橋 凉音 (もとはし すずね)
総評
昨年度よりも多くのポスター作品の応募があり、かつ高校生からの応募も多数あったことは、とても喜ばしく、一歩前進したように感じる。
応募されたポスター作品を並べた際には、審査員、関係者一同、応募作品のレベルの高さに驚かされた。
受賞作品をはじめ、多くの作品が、文章を書く喜びやイメージの広がりを、自分なりにモチーフを活かしながら上手に組み立てて表現しており、色彩も美しく様々な技法を効果的に活かしている。
また、標語も精選されており、明朝体やゴシック体のレタリングで美しく表現されている作品も多い。
今回奨励賞となった「君が魚なら」を標語としたポスターは、原稿用紙の上に魚のメヒカリを描き、万年筆がおかれ、今までにない独創的な作品であった。次年度もポスター作品への応募を期待すると共に、その独創性を活かし、文学賞である吉野せい賞への文学作品応募も期待したい。
ポスター展
巡回展示日程(全作品を展示します)
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令和6年11月2日~令和6年11月24日 いわき市立草野心平記念文学館
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令和6年12月4日~令和7年1月6日 いわき市立いわき総合図書館
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令和7年1月18日~令和7年2月16日 いわき・ら・ら・ミュウ 2階市民ギャラリー
このページに関するお問い合わせ先
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