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第45回吉野せい賞/第46回吉野せい賞作品募集ポスター受賞作品が決定!!

更新日:2022年10月12日

第45回吉野せい賞

吉野せい賞応募数及び選考委員

  • 応募総数
    38

    ジャンル別内訳 小説:27編、童話:3編、戯曲:3編、文芸評論:1編、ノンフィクション:4編

  • 選考委員
    鈴木 俊之、園部 義博、永沼絵莉子、福住 一義、吉田 隆治(50音順)  

 

選考結果

準賞

  タイトル  「辿り道 (たどりみち)」 (小説)  
  作者名   半澤りつ (はんざわ りつ) 


【あらすじ】
 鈴木伸子はホームヘルパー(当時の呼び名は家庭奉仕員)として昭和から平成にかけて約30年間、定年まで勤めてきた。自分の提供したものを食すか確認する老婆、風呂敷包みを生涯背負い続けた女、他人を操つろうとした結果孤独を招いた老女、80歳を過ぎ結婚に挑もうとする男など、時代の推移とともに変わっていく仕事内容に対応しながら、仕事を通して出逢った様々な高齢者たちとの交流を丁寧に綴る。

【選評】
・登場するそれぞれの老人にリアリティがあり、無駄がない。

・内容や文体、構成もしっかりしており、ここまで磨き上げ、仕上げた力がよく伝わってくる。

・旅の浪曲師(のちの国民的歌手)と地元の娘との実らぬ恋が思い出話として挿入される。阿武隈の山里に広く伝わるエピソードが土地柄を雄弁に物語る。

 

奨励賞 

  タイトル  「夫の羽(おっとのはね)」 (小説)  
  作者名   春乃 礼奈(はるの れな)

【あらすじ】

 夫の背中から月に一度、羽が生えてくるようになった。ふとしたことから古いリサイクルショップの存在を知った私は、夫の羽を持ち込んでみると思いの外高値が付いた。取り立てて取り柄のない私は自分が認められたような気がして、夫の体調管理や栄養面など羽の育成に執着していく。一度は高値で売れた羽が返品され、ついには夫の羽化もなくなる。平板な日常が戻ってきた矢先、自分の背中に羽の存在を感じる。 

【選評】

・作品の世界に奥行きがあり、興味深く読んだ。

・世界観も物語も破綻せずにしっかり書けており、ハッとする描写もあるのだが、羽に対してもう少し踏み込んだ書き方をしてもよかった。

・限りなく準賞に近い作品。

 

奨励賞

  タイトル  「人間模様(にんげんもよう)」 (小説) 
  作者名   伊藤 均 (いとう ひとし)


【あらすじ】
 昭和18年に結婚をした和生に、一年後、赤紙が届き出征する。その後、戦死の報が家族の元へと届き、ほどなく終戦となった。和生自身は東京大空襲で負傷したものの、存命であり、妻が弟と再婚したことを知り、人知れず離郷を決意する。傷の手当てをしてくれた松山家に住まわせてもらい、町役場に勤め、なんとか戸籍を復活させて正職員となる。松山家から養子縁組を依頼され、隣組の牧子との縁談も纏まり、苦労の果てに新たな人生を歩み出す。

【選評】

・深みがある作品。内容は悲惨だが、悲壮感がなく前向きに進んでいくところがいい。

・全体的に破綻がなく、次々に展開が変わり、面白い。

・読む楽しみとしていえば少し弱いが、力はある。 

 

青少年特別賞 

  タイトル  「開幕のベルが鳴ったら(かいまくのべるがなったら)」 (小説)   
  作者名   武藤 梨愛(むとう りあ)


【あらすじ】

 中学二年生の冬休みになっても進路が決まらない私は焦っていた。のんびりしている友達の流歌ちゃんまでが、進路を決めて猛勉強を開始している。ふとしたことから観劇する機会を得て心動かされ、「そらうえ劇団」を見学し、入団する。稽古の傍ら、憧れの劇団員が通っていたF高校を目指すことに決め、勉強にも力を入れる。春休み、初舞台に立つ私の目の前で幕が上がり、舞台から見る景色はとても輝いていた。

【選評】

・テンポよく読める作品で、今後に可能性を感じる。

・大人の感覚、視点で描写できているところもあり、レベルは高い。

 

青少年特別賞 

  タイトル  「届かない声(とどかないこえ)」 (小説)   
  作者名   米澤 咲(よねざわ さくら)


【あらすじ】

 中学生になった私は、時折、母のことが鬱陶しくなる。一緒に時間を過ごすことが多く、一番身近で常に力になってくれる存在だが、それまでのように素直に接することができない。学校に車で迎えに来てくれたのを拒んだりもした。友人と会うため身支度を整えていたときにも、母の手助けを断り、そのまま家を出た。自動車事故に遭い、私は帰らぬ人となり、その魂が泣き崩れる母を眺め、それまでの振舞いを見つめ直す。

【選評】

・一定の水準以上にあり、中学生でよくここまで書けたな、という思いがする。

・中学生特有の悩みも重すぎず、身近なものでリアリティがある。 

 

総評

・今回は吉野せい賞に32編、中学生以下の青少年特別賞に6編、計38編の応募があった。前々回は応募総数が22編と少なかったが、前回(36編)、今回と40編近い数が集まり、それなりに復調の兆しがみられた。

・内訳は小説27編、童話3編、戯曲3編、ノンフィクション4編である。各選考委員選出による一時通過作品13編(吉野せい賞対象11編、青少年特別賞対象2編)について協議した結果、準賞1編、奨励賞2編、青少年特別賞2編を選出した。

・一次通過13編のうち奨励賞受賞経験者の作品が5編あった。選考には厳しい制約がある。過去に奨励賞を受賞したことのある作者は、準賞レベル以上の作品が、準賞受賞者はその上の正賞レベルの作品が求められる。そこまで達していなければ、たとえほかの作品より優れていても賞の対象からはずされる。今回も奨励賞経験者の4編がこの規定によってはずされた。

・残念ながら正賞に該当する作品はなかった。しかし、奨励賞受賞者はそれなりに高い水準を維持し、それ以外の応募作品も意欲的なものが多かった。全体的には、前回以上に読みごたえのある作品が多かった。

・準賞の半澤りつさんは平成29年に奨励賞を受賞しており、その後の精進が実ったかたちになった。奨励賞の春乃礼奈さん、伊藤均さんは初受賞である。

・今回は全体のレベルが高いだけでなく、若い人の応募が復活した印象がある。20代は2人、高校生は4人。それ以上に、中学生以下の青少年特別賞には6人が応募した。その結果、中学2、3年生2人の作品が同賞に選ばれた。吉野せい賞は若い才能を発掘する場でもある。この状況が維持されることを望みたい。

  

作品の掲載

  受賞作品は、総合文藝誌「風舎 第17号」(令和5年3月発行予定)に掲載する。(予定)


 

第46回吉野せい賞作品募集ポスター

吉野せい賞作品募集ポスター応募数及び審査委員

 応募総数 31点

 審査員 佐久間 静子、竹内 啓子 (50音順)

 

審査結果

最優秀賞 

依田 穂(よだ みのり)   いわき市立中央台南中学校3年

令和5年度の吉野せい賞作品募集の広報用ポスターとして使用します。

依田穂さん

「君はどんな『物語』を描く?」

【講評】
 青と白で統一された色調がさわやかで人目を引く作品。クジラや魚の群れが左上方に向かって力強く泳ぐ背景が画面に動きをもたらし、あわせて登場人物の想像力ものびのびと拡がっていくかのように感じられた。また、原稿用紙を全体のトーンに合わせた水色のマス目だけで描くアイディアが面白く、画面全体に流れる透明感の演出にもつながっている。一方で小さいながらリアルに描かれた黒い万年筆からは、物語を書くことへの強い意志が伝わってくる。きれいなレタリングが背景の色の影響で少し読みづらい部分があるものの、豊かな空想の海が広がる光景が創作意欲をかきたてる秀逸な作品である。 

優秀賞 

志賀 葵 (しが あおい)   いわき市立内郷第一中学校2年

志賀葵さん

「思い描く世界にひたれ」

【講評】
 左腕に紙をしっかりと抱え、ペンを持った右手をこちらに伸ばしたまま、逆さまに水中を漂う少女の姿を描く斬新な構図の作品である。光が差し込む右上方から左下方の深みに向かって対角線上に落ちていく少女の、見開いた眼の色と丸い口、水中で広がる髪の毛の描写が、無数の水泡や揺らぐ水面の描写と相まって、神秘的な独特の雰囲気を作り上げている。空想に身をゆだねるときの浮遊感や心地よさを思い出させてくれる作品であり、ポスターとしてもさることながら何より絵画としての完成度が高いことが評価につながった。

優秀賞 

引地 茉乃 (ひきち まの)   いわき市立泉中学校1年

引地茉乃さん

「私の思いを筆に乗せて―」

【講評】
 カラフルなモチーフと登場人物の明るい表情が、はつらつとした印象を与える作品。画面いっぱいに配置された多種多様なモチーフは、私たちの周りにたくさんの題材があふれていることを示唆する。それらに囲まれた女子中学生はきっと好奇心旺盛な子に違いない。対象を一つ一つしっかり丁寧に描き切っているところが素晴らしく、髪の毛と制服のリボンを揺らす動的な表現など細部にこだわっている点にも好感がもてた。キャッチコピーをノートらしいマス目の上に書いたのは、デザインとしても、文字を読みやすくする工夫としても良い。
 

奨励賞

  • ()()中央台北中学校3年   中田 琴 (なかだ こと) 
     
  • 泉中学校3年   鈴木 祐奈 (すずき ゆうな)
     
  • 平第三中学校3年   志賀 日和 (しが ひより)
     
  • 平第三中学校3年   鈴木 愛海 (すずき あいみ)
     
  • 磐城学芸専門学校3年   阿部 颯生 (あべ さつき) 
     

総評

 コロナが収束していない今年度も昨年並みに多くのポスターが寄せられ、とてもうれしく思っている。

 文章に親しみ、イメージを含ませることの大切さを伝える作品はいずれも質が高く美しい。イメージの広がりを波紋や渦で表現した作品、グラデーションの色合いを上手に生かした作品、また、モチーフの主人公がしっかりと万年筆やペンを握っており作者の意図が明確な作品が数多くあった。

 受賞作品は、イラストの組み合わせも高度で上手であり、原稿用紙の枠の中に文字を入れるなど、レタリングも的確で作者の意図がはっきりとしている。

 皆様がポスターからたくさんのことを学び感じて、本に親しみ、イメージを広げる若者になることを願っている。

 

ポスター展

巡回展示日程(全作品を展示します)

  1. 令和4年11月5日~令和4年11月27日 いわき市立草野心平記念文学館 

  2. 令和4年12月6日~令和5年1月5日 いわき市立いわき総合図書館

  3. 令和5年1月21日~令和5年2月19日 いわき・ら・ら・ミュウ 2階市民ギャラリー 

このページに関するお問い合わせ先

観光文化スポーツ部 文化交流課

電話番号: 0246-22-7544 ファクス: 0246-22-1243

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