市長議会提案説明
登録日:2025年2月20日
市長議会提案説明(令和7年2月定例会)
本日ここに、令和7年市議会2月定例会が開催されるに当たり、令和7年度の市政運営の基本的な考え方と提出議案についての提案理由を説明申し上げます。
はじめに、令和7年度の市政運営の基本的な考え方を申し上げます。
今年、いわき市誕生から59年です。そして、来年は市制施行60周年です。今後、80周年、100周年までの将来を見据え、これまで先人たちが築いてきた歴史や功績を振り返り、総括しながらも、不確実性が高く将来の予測が困難な時代にふさわしい未来を果断につかみとらなければなりません。これまでの常識や経験の延長上に本市の未来の展望を描くのではなく、想像力と構想力をもって、明るい未来をつくっていきたいとの強い想いを抱いています。
そのため、予測困難な未来を生き抜く若者たちと、これまで以上に対話を重ね、いわきらしい、幸福度の高い「ウェルビーイングなまちづくり」を目指し、様々な分野の第一人者をアドバイザーに迎え、若者たちが輝く未来へ戦略的に投資していきます。
目下の中長期的な課題にも速やかに対応します。医療、産業、防災、教育、子育て、公共交通など、多岐に渡る分野で、待ったなしの対応が求められています。
市民の皆様といわきへの想いを共有し、政策の柱に「次世代を育てる」、「命・暮らしを守る」、「まちの魅力を高める」、「豊かさを創る」の4つを掲げ、各分野における様々な取組に挑戦します。
また、これらの政策を支える構造改革に併せて取り組み、改革の動きをさらに前進させていきます。
はじめに、1つ目の柱「次世代を育てる」についてのうち、まず「教育」についてです。
これまで学校給食費については、令和5年度から第3子以降を無償としています。加えて、昨今の物価上昇に伴う食材費の上昇分についても、令和4年度以降、公費負担としてきました。今般、施策を一歩前に進めたいと考え、こどもに係る学習費などの負担が大きい中学生を持つ家庭の負担軽減を図るため、新たに中学校の学校給食費を無償化します。 併せて、2月17日に石破総理大臣は「まず小学校の給食無償化を念頭に、令和8年度以降、できる限り早期の制度化を目指す」旨を国会で表明しました。今後、国施策とも相まって、小中学校共に無償化が図られるよう尽力します。
また、引き続き、学力向上の取組を強力に進めるとともに、支援を要する児童生徒の個別最適な学びを実現するため、特別支援教育ソフトを活用した取組を実施します。
さらに、学校に通うこども達の教育環境をより快適にするため、全ての小中学校において、トイレの洋式化とエアコンの設置を進めます。
次に「子育て」についてです。
乳幼児の心身の発達をはじめとする様々な問題の早期発見に役立てるため、乳幼児健康診査に「1か月児健診」を追加し、良好な療育に繋げます。
また、貧困の割合が高いひとり親家庭等の経済的な負担を軽減するため、中学校を卒業する児童の新生活を支援する、本市独自の新たな応援金を創設します。
次に「担い手」についてです。
国際的なまちづくりも見据え、本年度新たに設置した「CIFALジャパン国際研修センター」と連携し、国連基準の質の高い教育プログラムを実施します。
また、首都圏等からの移住を促進するため、移住対策担当員を配置し、IWAKIふるさと誘致センターの体制を強化します。
続いて、2つ目の柱「命・暮らしを守る」についてのうち、「防災」についてです。
防災学の権威である東北大学災害科学国際研究所と連携し、地域防災力の中核を担う自主防災組織や防災士の強化・育成に取り組み、自助力・共助力の向上を図ります。
また、AIによる河川水位予測システムの導入など、デジタル技術や先進技術等を最大限活用した防災DXを推進します。加えて、未完成となっている22河川の河川洪水ハザードマップを作成します。
さらに、消防力の強化に向け、救急救命士の計画的な育成による安定した救急サービスの提供や、大学生等の力を活用した消防団員制度の創設による、活力ある持続可能な消防団組織づくりに取り組みます。
次に、「医療・健康」についてです。
これまでの取組が結実し、令和2年から令和4年の2年間で、市内の医療機関で働く医師が21人増えました。
更なる医師の確保に向け、市内病院への勤務を希望する医学生を対象とした、より利用しやすい修学資金制度を新設します。
診療所の新規開設や承継に係る補助金については、補助金の交付要件を緩和するなど、診療所の開設、承継を支援します。
また、市病院協議会では、休日及び夜間に救急患者を受け入れる輪番体制の再構築に取り組んでおり、市におきましても、救急患者の受入体制の強化を図るため、市内の救急告示病院を支援します。
さらに、市民の健康長寿社会の実現を目指すため、減塩食普及プロジェクトや動画等を活用した情報発信などの取組を通じて、「いわきひとしお」ブランドの更なる浸透を図り、地域社会全体での健康づくりを推進します。
次に、「暮らし」についてです。
高齢、障がい、こどもなどの分野別の福祉サービスだけでは対応しきれない地域住民が抱える複合的な生活課題に対し、既存制度の枠を超えた包括的な相談と支援が可能となるよう、様々な機関が連携した重層的な支援体制を構築します。
また、市民活動団体がまちづくりや地域課題の解決に取り組む活動を支援する補助制度に加え、自治会が住みやすい地域づくりに向け、主体的に取り組む地域活動を支援します。
さらに、地域の安全・安心な暮らしを守るため、防犯カメラの設置など、自治会が実施する防犯対策を支援します。
続いて、3つ目の柱「まちの魅力を高める」についてのうち、「まち」についてです。
地域おこし協力隊を活用した市街地の活性化に取り組みます。民間企業が有するスキルやノウハウを活用し、都市公園の魅力や機能性の向上などを図ります。
また、ネットワーク型コンパクトシティを実現するため、都市機能集積や、市街地の再生整備を推進します。
さらに、人口減少や高齢化が著しい中山間地域の住民の日々の暮らしを支えるため、生活サービス機能や活動拠点を一定程度集積した小さな拠点の形成、地域おこし協力隊や中山間地域集落支援員を活用した地域活性化に取り組みます。
次に、「環境・GX」についてです。
人と自然が共生するまち「循環都市いわき」の実現に向け、脱炭素化の推進と循環型社会の実現に取り組みます。そして、事業者の自家消費型太陽光発電の導入や、家庭用の太陽光発電や蓄電池、次世代自動車等の導入に対する支援を行います。
また、限りある資源を効率的に利用し、リサイクルなどで循環させながら、将来にわたって持続して使い続けていく循環型社会の実現に向け、フードドライブの支援やフードシェアリングサービスを活用した食品ロスの削減などに取り組みます。
次に、「地域交通」についてです。
オンデマンド交通や共創型移動サービスの実証・導入等による、公共交通空白地域ゼロの実現を目指します。
交通事業者従業員の第二種運転免許取得等を支援し、公共交通を支える運転手の確保に努めるほか、主要な都市拠点間を結ぶ「基幹バス路線」の維持・強化を図ります。
また、中山間地域を中心とした公共交通不便地域や、公共交通空白地域における交通弱者の移動手段の確保を図るため、公共ライドシェアや定額タクシーなど、地域のニーズに即した地域公共交通の導入・運営等を支援します。
続いて、4つ目の柱「豊かさを創る」についてのうち、「産業」についてです。
本市の製造品出荷額等が14年ぶりに1兆円を超えました。
産業人財の確保・育成に向けて、デジタル技術の活用や脱炭素に挑戦できる将来人材、次世代を担う経営者の育成など、産業界が主体となった多様な人づくりの支援を進めます。
また、市内で未活用となっている土地・建物の現状調査や立地企業の雇用確保の現状調査を実施し、企業立地環境の更なる充実に向けた方策について検討を進めます。
次に、「農林水産業」についてです。
農業では、生産性と収益性の高い経営の確立を促進するため、防除用ドローンの導入などによるスマート農業やトマト・ねぎをはじめとする主要品目のブランド化などを推進するほか、本市が抱える農業等の課題解決を図るため、福島大学食農学類との更なる連携強化に取り組みます。
林業では、市産木材の利用を促進することにより、林業・木材産業の発展や適切な森林整備に取り組み、地域経済の活性化を図ります。また、ICT技術等を活用したスマート林業の導入支援や林業経営を担う新たな人材の確保・育成にも取り組みます。
水産業では、「常磐もの」のブランド力強化や認知度向上、販路開拓を図るため、主力商圏である首都圏において飲食店を活用したプロモーション活動等を行います。こどもや学生等の若い世代を中心に、各世代層に応じた事業を実施し、本市水産業に対する理解・関心を深め、魚食普及、及び水産業の担い手確保・育成を図ります。
次に、「観光・文化・スポーツ」についてです。
本市の観光の宝であるいわき湯本温泉を、地域の皆様や事業者をはじめとする様々なプレイヤーの参画のもとに、東北一の温泉地の実現に取り組みます。
令和7年度末頃行われるナショナルサイクルルートの指定を目指し、 ゲートウェイとなるいわき駅周辺を整備します。福島県で令和7年度から令和9年度まで開催予定のデスティネーションキャンペーンと連携したイベントを開催することで、観光交流人口の拡大を図ります。
また、平・勿来地区での歴史講座やまち歩きのほか、勿来地区“民・官”協働勉強会の開催など、いわきの歴史・文化・伝統を生かした人材の育成に取り組み、地域文化の醸成を図ります。
さらに、J2昇格以降、毎年順位をあげ、J1への昇格を目指し活躍を続けるいわきFCによるプロスポーツ観戦と観光とが連携した、いわきの魅力向上の取組や、アリオスなどにおいて、引き続き若者の心に響くエッジの効いた企画開発に取り組みます。地元消費の拡大、雇用の創出・増大、新たな起業などにつなげ、多くの市民に誇りと愛着を抱いていただけるよう、魅力的な「エンターテインメント」「カルチャー」が身近にあるまちを目指します。
最後に、これまで述べた各政策を支える「構造改革」についてです。
構造改革に着手して、まもなく3年が経過し、集中改革期間の一旦の区切りを迎えます。
まだまだ改革途上ではありますが、「市民サービスのデジタル化」や「職員の生産性向上」などの各分野において、改革の成果が着実に目に見えてきています。
令和7年度は、新たに「総合コールセンター」を開設するほか、市からの通知をデジタル化し、市民一人ひとりの郵便受けとなるサービスである「郵送DX」や、自治会内の連絡等をデジタル化する「自治会DX」などの取組を進め、市民の皆様の更なる利便性向上を図ります。
これらに加え、「簡素で効率的な行財政マネジメント」の実現や、職員のパフォーマンスを引き出す「人材マネジメント改革」等の内部改革をしっかりと進めます。
また、人口減少と少子高齢化が進展し、経済規模が縮減していく中にあっても、複雑多様化する社会課題や市民のライフスタイルへの対応にしっかり取り組んでいくことが不可欠です。
企業や団体など多様な主体と連携し、地域が抱える課題解決に取り組む公民連携を強力に推進するため、新たに公民連携デスクを設置し、民間の柔軟なアイデアやサービス向上の提案を企画段階から取り入れる体制を整えます。
今後とも、手を緩めることなく、各分野において一歩一歩着実に取組を積み上げながら改革・改善を前進させていきます。
以上、令和7年度の市政運営についての基本的な考え方を申し上げました。
今後も、現場主義に徹しながら、各分野で挑戦する皆様の生の声をしっかりと受け止め、市民目線を大切にし、市民の皆様に寄り添いながら、「住んで良かった、住み続けたい」と実感できる、幸福感の高い「ウェルビーイングなまちづくり」を目指していきます。
議員各位におかれましても、今後の変化の早い、困難課題の多い時代に向けて、様々な政策提言を、この議場でも我々にご提案いただき、共により良い政策を形成できればと考えています。
次に、今回提案いたしました議案について説明申し上げます。
議案件数は、条例の制定案が3件、廃止案が1件、改正案が19件、予算案が33件、その他の議案が8件の計64件であります。
私からは、今回提案の議案のうち、条例の制定案2件、改正案1件及び新年度予算案の概要について説明申し上げます。
初めに、「議案第1号 いわき市ひとり親家庭等応援金支給条例の制定について」申し上げます。
国では、令和5年12月に閣議決定された「こども・子育て支援加速化プラン」において、児童扶養手当や児童手当など、ひとり親家庭を含む子育て世帯への支援の拡充がなされたところです。
本市においては、これまで市独自事業により、ひとり親家庭を経済的に支援する、「父子、母子等奨学資金」、「父子、母子福祉手当」、「父子、母子家庭等入学児童祝金」を支給しておりますが、これらの事業が開始から半世紀以上経過していることから、国の拡充の機を捉え、制度全般を見直し、ひとり親家庭に対し、一番必要な時期に、必要な額を支給できるよう新たに応援金を支給するため、本条例を制定するものです。
次に、「議案第2号 いわき市医学生応援修学資金貸与条例の制定について」申し上げます。
本市では、これまで、医学生に修学資金を貸与する市内の病院に対し補助金を交付して病院に勤務する若手医師の確保を支援して参りました。
修学資金制度は、貸与期間と同じ期間、貸与した病院に勤務すると返済が免除されるもので、これまで一定の成果を得て参りましたが、市医療センター以外の修学資金制度の利用者は限定的となっております。
今般、医師を目指す若者を応援するとともに、広く市内の病院勤務医の確保を図ることを目的として、市が医学生に修学資金を直接貸与し、将来市内のどの病院に勤務しても返済免除となる、医学生が利用しやすい修学資金制度を創設するため、本条例を制定するものです。
次に、「議案第11号 いわき市消防団員の任免、服務及び給与に関する条例及びいわき市消防団の設置等に関する条例の改正について」申し上げます。
本市の消防団員については、年々減少しており、今後、地域防災力の低下が懸念されることから、消防団員の確保が喫緊の課題となっております。
こうした課題に対応するため、従来の消防団員に加え、イベントやSNS等の様々なツールを活用し、市民への広報活動を行うなど、若い感性で消防団の魅力を発信するため、市内の大学生や専門学校生を中心とした機能別消防団を新たに創設することから、所要の改正を行うものです。
次に、新年度予算案の概要について説明申し上げます。
はじめに一般会計のうち、歳入面について申し上げます。
市税等の一般財源については、定額減税の終了に伴う市税の増や、国の地方財政対策を踏まえた地方交付税の増などにより、前年度と比べて、約10億円、1.1%の増となっております。
また、繰入金については、公共施設の長寿命化対策をさらに推進するため、公共施設整備基金を活用したことによる増などにより、前年度と比べて、約6億円、6.5%の増となっております。
これらにより、可能な限り財源の確保に努めたうえで、なお不足する財源については、例年同様、財政調整基金の取崩しにより、対応しております。
次に、歳出面について申し上げます。令和7年度は、ウェルビーイングなまちづくりを実現すべく、コロナや災害を乗り越え、新たなステージに向けた予算として編成しました。
主な内容を申し上げますと、「骨太の方針関連予算」として約203億円を、経済対策関連予算として約17億円を計上しました。特徴としては、「人づくり投資予算」をさらに拡充し約23億円を計上したほか、「医療・救急」や「雇用・産業」などの分野に注力することとし、「5つの重点パッケージ予算」として、約86億円を計上しました。
この結果、令和7年度一般会計当初予算の総額は、1,508億3,788万3千円で、前年度と比べて、約62億円、4.3%の増となっております。
次に、特別会計については、総額が1,080億6,792万6千円で、競輪事業における開催日数の増に伴う経費の増などにより、前年度と比べて、約53億円、5.2%の増となっております。
最後に、企業会計については、総額が674億7,628万4千円で、病院事業における院内ネットワーク機器の更新に伴う経費の増などにより、前年度と比べて、約10億円、1.5%の増となっております。
私からは以上でありますが、その他の議案並びに予算案の詳細につきましては、両副市長から説明申し上げます。
いずれも市政執行上、重要な議案を提出しておりますので、何とぞ慎重御審議の上、速やかなる御議決を賜りますようお願い申し上げ、私の提案理由の趣旨説明といたします。
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