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『赤井駅』(平成29年11月29日市公式Facebook投稿)

更新日:2017年11月29日

いわきの『今むがし』Vol.83

赤井駅から小川郷駅に向かって発車する蒸気機関車〔昭和45(1970)年3月、遠藤啓氏撮影〕

20171129-1 磐越東線赤井駅は、大正4(1915)年7月、平-小川郷が平郡東線(へいぐんとうせん)として開通した際に、駅が開設されたのが始まりでした。大正6(1917)年10月には、平-郡山が全線開通して磐越東線と改称されました。
 それまで、赤井駅西方で産出される石炭は、赤井軌道(明治40年に赤井村字常住-平駅裏に敷設)によって運ばれ、平(現いわき)駅で積み替えられて市場に送り出されました。当時、平駅は石炭積出駅としてにぎわっていたのです。
 平-赤井に鉄道が敷かれると、石炭積込みも最寄りの赤井駅となり、常住からの赤井軌道は赤井駅まで短縮され、鉄道開通以降、赤井駅は石炭積出駅となりました。
 赤井駅が開設された時期、好景気を背景に石炭開発が盛んに行われ、大正8(1919)年には、県道上に敷設されていた赤井軌道と並行して、朝日炭礦が独自で専用鉄道(※1)を敷設して、石炭採掘を行いました。
 さらに、戦時色が濃くなる昭和10年代に入ると、大手の日曹鉱業が、小名浜に進出した系列会社・日本水素工業で使用する熱エネルギーを求めて、既設の炭鉱を買収、さらに赤井駅北方約1kmの位置に日曹赤井炭礦を開削し、昭和16(1941)年、赤井駅との間に専用線(※2)を敷設しました。
 これにより、赤井駅からは石炭を運ぶ日曹赤井炭礦専用線、日曹鉱業の系列会社・妙高企業常磐(ときわ)炭礦(湯本の常磐炭礦は別会社)専用鉄道、石炭と粘土を運ぶ品川白煉瓦専用軌道(※3)(赤井軌道から転用)と、3本の線路が伸びることになりました。
 こうしてみると、赤井駅は、貨物駅オンリーとみられがちですが、年に一度、乗降客でにぎわう日がありました。そう、赤井薬師例祭の日(かつては旧暦で開催。現在は8月31日、9月1日)です。この日には数万人の人出を数え、平駅から1日数本の臨時列車が仕立てられて赤井駅は1日中にぎわいをみせました。
※1 専用鉄道=自己(この場合は炭鉱会社)の鉄道として敷設。線路幅=常磐線と同じ
※2 専用線=国鉄(JRの前身)の鉄道として敷設。線路幅=常磐線と同じ
※3 専用軌道=自己(この場合は炭鉱会社)の鉄道として敷設。線路幅=常磐線より狭い
 

赤井駅を小川郷駅に向けて発車するディーゼルカー〔平成29(2017)年11月、いわき市撮影〕

20171129-2 昭和30(1955)年から始まる高度経済成長は、鉱工業の発展を促しましたが、唯一石炭産業だけは、斜陽化を止めることはできませんでした。
 赤井駅から延びていた3本の鉄道は、それぞれ日曹赤井炭礦専用線は昭和35(1960)年に、日曹鉱業の系列会社・妙高企業常磐炭礦(湯本の常磐炭礦は別会社)専用鉄道は昭和23(1948)年に、石炭と粘土を運ぶ品川白煉瓦専用軌道は昭和30年に廃止となりました。
 昭和38(1963)年4月現在の赤井駅線路図をみると、上下本線用2本の旅客ホームと貨物ホームがみえます。炭鉱の閉山後、数本の側線は使われず、線路図の側線は放置されていたものでしょう。日曹赤井炭礦専用線もすでに廃止となっています。線路の多さにかつてのにぎわいをみるばかりです。
 まもなく、数本の側線は取り外され、しばらくの間、ガランとした空間が広がっていました。
 戦前の一時期、赤井産のナシを盛んに出荷する風景がみられました。昭和10(1935)年10月23日付の新聞『新いわき』をみると、前年の昭和9(1934)年に鉄道を経由して発送されたナシの貨車数が紹介されており、これによると、平駅が62車、赤井駅が53車、綴駅11車、小川郷駅6車などの順で、赤井駅が確固たる地位を築いていたことがわかります。しかし、戦後は自動車輸送で平駅まで運ばれ、ここから市場へ発送されるようになりました。
 昭和44(1969)年10月には手荷物および小荷物の配達取り扱いが廃止、荷物輸送は昭和59(1984)年2月に廃止、さらに昭和60(1985)年3月には無人駅となってしまいました。
 現在は上下線共用の線路を1本残すのみの典型的なローカル駅ですが、昔ながらの木造駅舎が残っており、かつての繁栄の一端をしのぶことができます。
(いわき地域学會 小宅幸一)
 

その他の写真

赤井駅を出発する旅客車を牽引する蒸気機関車(昭和45年3月、遠藤啓氏撮影)

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赤井駅(昭和55年4月、いわき市撮影)

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行商のおばちゃん・赤井駅(平成3年、本田和弘氏撮影)

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赤井駅(平成10年7月、いわき市撮影)

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赤井駅舎と駅前花壇(平成10年7月、いわき市撮影)

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工事中の赤井駅-平成30年1月末ごろ完成予定(平成29年11月、いわき市撮影)

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赤井軌道と平駅の位置関係 〔1.50,000地形図 平(明治41年測図)〕

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赤井地区における炭礦地域 〔1.50,000地形図 平(昭和8年要部修正測図)]〕

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電話番号: 0246-22-7402 ファクス: 0246-22-7469

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