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その37・最終回 『図書館の進化のあゆみを振り返ります』(平成29年3月31日市公式Facebook投稿)

登録日:2017年3月31日

「図書館の進化のあゆみを振り返ります」  

 市制施行50周年をきっかけに、2年にわたってお送りしてきた「50周年まめちしき」は、今回が最終回です。これまでお読みいただいた皆さま、ありがとうございました。そして、この記事を執筆するにあたって、心から感謝を伝えたい先がもうひとつ。それは、図書館です。
 いわき市の過去を紐解くために必要な文献や新聞記事など、図書館で所蔵している資料たちの助けがなければ、書くことができなかったものばかりです。加えて、それら必要な情報に、いつも無事たどり着くことができるのは、図書館が体系的に資料を整理し、私たちに提供してくれているからこそです。
 ということで、最終回となる今回は、2年間の執筆を支えてくれた感謝を込めて、市立図書館のこれまでのあゆみを振り返ります。

 将来いわき市になる地域に公立図書館が登場したのは、日本が戦後復興の中にあった昭和20年代です。昭和23年の平公民館図書館部の発足を皮切りに、昭和24年には内郷町立図書館、昭和26年には四倉公民館図書室と湯本町立公民館図書室、昭和27年には小名浜公民館図書室が発足するなど、公立の図書館や図書室が相次いで誕生しました。

まめちしき38-1 昭和4110月にいわき市が発足すると、すべての図書館(室)が新市に引き継がれて、いわき市立平公民館図書室(昭和43年に平図書館へ名称変更)、いわき市立小名浜公民館図書室(昭和42年に磐城図書館、昭和55年に小名浜図書館に名称変更)、いわき市立常磐公民館図書室(昭和42年に常磐図書館に名称変更)、いわき市立内郷図書館となり、昭和47年には勿来図書館が、昭和58年には四倉図書館が設置されて、現在の体制が整っていきます。
 これらのあゆみと同時に、図書館サービスには広大な市域をカバーする必要性も生じました。それを解決したのが、「移動図書館」です。
 移動図書館は、図書館が遠いなどの理由で、直接利用が難しい人のために、専用車に蔵書を積んで市内の各地区を巡回し、本の貸出を行うサービスです。いわき市最初の移動図書館車は、昭和436月に福島県立図書館から寄贈を受けた「あずま号」ですが、大型バスをベースにした車体だったため、狭い山道を走行できず巡回ルートが限られていました。
 そこで市は、昭和478月に初代「いわき号」(現在は、5代目です)を購入します。いわき号は、小回りが利くマイクロバスを図書館用に改装したもので、3,000冊もの蔵書を積んで市内101か所を巡回できるようになりました。昭和5610月には、初代「しおかぜ」(現在は、3代目です)を購入、現在の2台体制が整います。平成28年度現在、2台の移動図書館車は市内の北部・南部地区に担当を分けて、毎月約1回のペースで119か所のステーションを巡回、皆さんの近くまで本を届けています。

 昭和50年、それまで地区ごとの運営だった図書館の中核的な位置づけとなる「中央図書館」が誕生します。中央図書館は、それまでの平図書館(平字掻槌小路20番地の平陽女学校跡にありました)を移転し名称を変更するというかたちで、この年の5月にオープンした文化センターの4階と5階に居を構えました。
 中央図書館は、オープン当初からたいへんな賑わいとなり、平図書館時代の2倍以上に増やした蔵書も利用に追い付かず不足状態となるほどでした。開館5日間で913人が新規に利用登録し、貸出数は1,691冊、当時の新聞でも「中央図書館モテモテ 旧館時代の6倍利用」(昭和5059日付「いわき民報」)や「中央図書館ものすごい利用 児童用書架は空っぽ 一月で旧平の一年分貸出」(昭和5066日付「いわき民報」)などと報じられました。

まめちしき38-3 その後も、市内の図書館利用は拡大を見せ、図書館もサービスを充実させていきます。
 昭和561月、中央図書館の日曜開館が始まります(現在は当たり前のように感じられますが、これ以前、日曜祝日は休館でした)。約12年後の平成53月には、全館で日曜開館が開始となり(日曜開館開始の紆余曲折について、くわしくは、図書館報YABINA29号のコラム「市立図書館いまむかし」第6→PDFはこちらをご覧ください。)翌月4月からは各館相互返却(貸出を受けた本を市内のどの図書館でも返却できるサービス)が始まりました。
 この相互返却サービスを可能にしたのは、市内各図書館間を結ぶ「巡回連絡車」の存在です。平成5年から導入された巡回連絡車は、現在、市内6図書館と文化センター内のブックポスト(本の返却ポスト)を1日2回巡回し、相互返却の他、予約本の迅速な図書館間取り寄せなどを可能にしています(連絡車をこれほどこまめに走らせている公立図書館は非常にめずらしいそうです。広域都市いわきならではの縁の下の力持ちなのです!)。

まめちしき38-10 平成59月には、貸出冊数をそれまでの3冊から5冊に変更、さらに平成1110月には15冊に変更と、大幅にサービスが拡大します。これを支えているのは、「図書館情報システム」です。現在の貸出風景といえば、カウンターでも自動貸出機でも、本に綴じ込まれたICタグをシステムが一瞬で読み取って手続き完了!ですが、初代システムでは、本に添付されたバーコードを1冊ずつ読み取らせるという手順でした。今思えば、それすらも手間がかかりそうな印象ですが、システム導入前の「貸出券」を使った仕組みを思えば、相当に画期的だったのです!
 袋状の貸出券が使われていた時代、本の貸出手続きは「ブラウン方式」といって、
(1)利用者が借りたい本と貸出券をカウンターへ持参、
まめちしき38-11(2)職員が本に添付されているブックカード(巻末に取り付けられたポケットに入れてあり書名や分類番号、本の登録番号が記載されている)を貸出券へ移す、
(3)本の巻末に貼られた返却期限票に2週間後の日付をスタンプ、
(4)貸出券を返却日ごと本の登録番号順に並べてカウンターで保管
といった手順で行われていました(中央図書館と地区図書館では手順が若干違いました)。返却もほぼ同様の手順だったことを思うと、
15冊の貸出業務もなかなかの負担で、スピーディーな処理には職員の熟練も必要でした。
 図書館情報システムの導入と同時に、それまで館ごとだった利用者登録が全館で共通となりました。また、図書館のホームページも運用が開始され、コンピューターによる蔵書検索が可能となりました(それまでは、本を探すのもカードを使った手作業でした……今では考えられないですね)
  平成13年春には、19:00までの延長開館(火曜日から金曜日)が始まり、学生の皆さんにも社会人の方にもさらに便利になりました。こうして、図書館は、私たち利用者のニーズに応えて常にサービスを拡大させてきました。

まめちしき38-14  そんな図書館がさらに進化したのが、皆さんも記憶に新しい「いわき総合図書館」の誕生です。
 平成1910月、中央図書館は、いわき駅前再開発ビル「ラトブ」の4階と5階へ移転し、その名称を変更しました。いわき総合図書館は、開館と同時に自動出納書庫の導入、おはなしのへや、AVブース、ITコーナーの設置、いわき資料コーナーの拡大、商用データベースの提供開始、自動貸出機などを含む現在の図書館情報システムへの更新など、施設やサービスをさらに充実させ、「未来の市民をはぐくむ」ために、将来の蔵書100万冊を目標にしています(平成292月現在の蔵書は524,571冊です)。
 また、開館日と開館時間をさらに拡大、なお一層利便性が向上しました。いわき総合図書館のオープンを契機に、図書館ではカウンター業務の一部を民間業者へ委託するようになり、長時間の開館がかないました。現在、いわき総合図書館は月平均2.2日、地区図書館は2.5日程度しか休館せず、必要なときにいつでも利用できる環境を提供しています。

まめちしき38-16 平成233月の東日本大震災では、図書館も大きく被災しました。いわき総合図書館をはじめ各地区図書館では、多くの本が落下し、書架の転倒や照明の落下、窓ガラスや電気配線の破損なども生じました。職員は、災害関係業務を優先しながらも懸命に復旧作業に取り組み(復旧整理を行った本は、411日と12日の余震で再度落下、それでもあきらめず1日も早い開館に向けて作業を続けたそうです。頭が下がります……)、5月初旬には2台の移動図書館の運行を再開、5月下旬から6月にかけてすべての図書館の早期再開を果たしました。
 震災を経験した図書館は、移動図書館の巡回先に仮設住宅を追加したり、避難生活中の方の利用者登録を可能にするなど、新しいサービスを始めています。また、平成246月には、「東日本大震災いわき市復興ライブラリー」を開設して、震災と原発事故に関する資料の収集・保存・提供にも取り組んでいます。 

 まめちしき38-17 ここまで、市立図書館のあゆみを振り返りました。図書館が、私たち利用者の利便性向上のために、日々進化し続けてきたことがおわかりいただけたと思います。
 
図書館は、私たちの日常では、文芸書や実用書、雑誌などで生活に潤いを与えてくれる存在であり、また、調査や研究、学習の場面では、有用で信頼性の高い情報を的確に提供してくれる力強いパートナーでもあります。それぞれに図書館との付き合い方には違いがあると思いますが、インターネットを通してあふれ出てくる情報に溺れそうな私たちにとって、図書館がますます静かで安心できる空間に感じられる点は、共通しているのではないでしょうか?高度情報化社会に生きる私たちは、より一層図書館を活用したいものです。

→いわき市立図書館ホームページはこちら(外部リンク)

→過去の新聞記事などが読める郷土資料のページはこちら(外部リンク)

 平成28度と29年度の2年間、図書館にも支えられて「50周年まめちしき」をお送りしてきました。市公式フェイスブックや市公式ホームページを通してたくさんの方にお読みいただけましたこと、担当職員一同、心から感謝申し上げます。
 38回にわたったこの記事が、今後いわき市について調査や研究をされる方の参考やパスファインダー(情報収集の手がかり)になることを願って、筆を置きたい(いや、キーボードから手を放したい)と思います。これまでのご愛読、本当にありがとうございました。

その他の写真

市立図書館移動図書館車・初代「いわき号」(昭和50年5月)

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市立図書館移動図書館車・初代「しおかぜ」・市立山田公民館前(昭和56年10月)

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現在の移動図書館車:5代目「いわき号」と3代目「しおかぜ」

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市立中央図書館 貸出・返却カウンター(昭和61年9月)

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市立中央図書館学習室(昭和50年5月)

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市立中央図書館児童閲覧室(昭和51年4月)

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 市立中央図書館日曜開館(昭和56年1月)

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図書館情報システム導入後の市立中央図書館(平成11年9月)

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市立いわき総合図書館・くつろぎスペース(平成20年9月)

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市立いわき総合図書館自動出納書庫

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 <主な参考文献>
・「平成28年度いわき市の図書館(いわき市立図書館年報)」平成28(2016)年、いわき総合図書館
「図書館報YABINA(やびな)第24号~第33号(コラム『市立図書館 いまむかし』)」、平成25(2013)-平成27(2015)年、いわき総合図書館(→図書館報YABINAのHPはこちら

〔担当〕 市制施行50周年記念誌プロジェクト

このページに関するお問い合わせ先

総合政策部 広報広聴課

電話番号: 0246-22-7402 ファクス: 0246-22-7469

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