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その35 『市役所本庁舎は、こうして建設されました(2)』(平成29年1月25日市公式Facebook投稿)

登録日:2017年1月25日

「市役所本庁舎は、こうして建設されました(2)」

 「いわき市が誕生して50年、市役所の建物も築50年かぁ…」と思われている方はいませんか???それは、間違いです!
 前回から、いわき市平字梅本21番地に所在する、いわき市役所本庁舎が建設されたときのことを振り返っています。今回は、いよいよ建設地が決定し、落成までのことをご紹介します。

02_01市役所本庁舎起工式(昭和46年7月、いわき市撮影):完成予想模型を前にして大和田弥一市長のあいさつです 昭和44年6月に設置された庁舎建設調査特別委員会は、新しい本庁舎建設地の検討を目的としていました。検討の中では、合併時からの世論を踏まえ、建設候補地の調査対象を平地区と磐城(現在の小名浜)地区に絞り込んでいきます。具体案は、東京大学工学部都市工学科高山研究室による「いわき市都市整備基本計画書」(通称「高山レポート」)を参考に作成され、以下の3案で検討が開始されました。
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A案:仮庁舎付近
B案:福島高専の南部
C案:磐城地区北部の鹿島街道沿い
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 A案は平の既存市街地を活かすプランで、B案とC案は大規模開発によって新しい街(当時は「シビックタウン」と呼ばれた)をつくるプランです。

02_02市役所本庁舎ボーリング調査(昭和45年8月、いわき市撮影):建設場所の県立平工業高校跡地は地盤が弱く地質調査が行われました 特別委員会の検討作業では、市内候補地の現地調査や、千葉市や姫路市など先進9市の視察が行われました。
 市内の現地調査では、主に鹿島街道沿い福島高専南部の自由ケ丘団地裏側や、磐城地区船戸団地西側の丘陵地(現在の国道6号常磐バイパス林城交差点付近)を見たりしたようです。この際も、高山レポートで示された「自動車交通の便」や「駐車場の確保」が重要な要素ではあったようですが、ときは昭和40年代半ば。いわき市にも車社会の波が押し寄せていたとはいえ、常磐バイパスが平と小名浜を結ぶのは昭和50年代以降のことですから、現在とはまた違った感覚だったのではないかと思います。

 ここまでの調査検討を受けて会議が第10回を数えたころ、特別委員会の総まとめとして3案の集中審議が行われました。昭和45年1月22日はC案、24日はB案、26日はA案と、1日1案ずつじっくり意見を交わした結果、特別委員会のメンバーだけではなく、市議会全員協議会(本会議と同様に議員全員で行う会議。市や市議会の重要案件について協議や調整を行う)に諮った上で結論づけることとなりました。
02_03市役所本庁舎建設(昭和46年9月、いわき市撮影):基礎工事の様子のようです。地盤の弱い平字梅本、かなりの数の杭が見えます このように、市庁舎の位置決定の議論には、常に広く意見を聞く姿勢が貫かれますが、その背景には、強い世論や激しい市庁舎誘致合戦が合併前と変わらず続いていたことがありました。

 市議会全員協議会は、昭和45年2月6日に開かれ、3つの案について概算の費用を付加して説明されました。
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A案(仮庁舎付近、51,150平方メートル):県有地(県立平工業高校跡地)のため取得が容易。地盤が相当に弱いため、基礎工事費用は約1億円
B案(福島高専南部、約100万平方メートル):環境が良く、地盤が良好。民有地買収、造成に約5年必要。費用は42億円
C案(鹿島街道沿い、約50万平方メートル):地盤が良好。民有地買収、造成に約5年必要。費用は72億円
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02_04市役所本庁舎建設中を新川右岸から見る(昭和47年2月、いわき市撮影):骨組みができ上がったころでしょうか。全貌が見えてきました これに対し、参加議員から「案は市の将来を見通して選んだのか」や、「もっと民意を問うべきだ」など質問があり、特別委員会からは「近く公聴会を開く」旨の回答がありました。

 市議会全員協議会の結果を受け、翌日2月7日に特別委員会第11回会議が開かれました。委員の投票による採決が行われると、A案(仮庁舎付近)16票、B案(福島高専南部)0票、C案(鹿島街道沿い)4票という結果となり、庁舎建設調査特別委員会の結論は、A案となりました。
 この結果について、さらに広く意見を聞く場として、2月17日に公聴会が開かれました。意見を述べる公述人には、実際に合併作業にあたった旧14市町村の元幹部職員や市町村会議員、婦人会や青年会などの市民団体の代表者など、31名が選ばれ、当日は29名が出席しました。説明されたA案について、「政治、経済、文化、教育の中心地である」や「駅に近く交通網の要衝である」、「B・C案に比べて経費が少ない」などの理由から、出席者のうち25名が賛成しました。残る4名の反対意見は、「駐車場や道路が狭い」や「将来性を考えて広い場所が良い」など、大規模開発を望む声で、主に磐城地区の代表者から出されましたが、賛成多数で公聴会の結論もA案となりました。
 新しい市庁舎をどこに建設するか、多くの人の間でさまざまな意見が飛び交った8か月、ようやく決定へ向けた材料がそろいました。

 昭和45年2月臨時市議会の庁舎建設特別委員会委員長報告で、公聴会を含むと全12回にも及んだ審議の経過と結果「新庁舎の位置はA案(仮庁舎付近)」が報告され、承認されました。(承認された、と一口に言っても、この報告に対しては質疑と討論が行われ、発言した議員からは「A案に反対」または「まだ議論が尽くされていない」などの意見があり、ここからも当時の左右に揺れる世論がうかがえます。)

02_05市役所本庁舎を南側の新川上空から見る(昭和48年頃、いわき市撮影):完成間近、駐車場整備や植樹が進んでいます。今は大きく育っている木がどれも小さくてかわいいです 昭和45年3月定例市議会で、大和田弥一市長は、いわき市役所の位置を定める条例の改正について提案理由を説明する際、「合併時点より懸案事項でありました市庁舎の位置決定につきまして…(中略)…特別委員会におきまして、慎重にご審議され、かつまた公聴会を開催され市民各層の声を聴されまして適切なる結論を出され…(中略)…多数のご賛同を得ましたことは誠に喜びにたえない次第」と述べた上で、長期の調査検討に携わった関係者に謝意を表しました。
 提案は無事可決となり、「いわき市役所の位置を定める条例(昭和41年10月1日制定)」の一部が以下のように改正となりました。
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「いわき市平字三崎一番地」の次に「いわき市平字梅本13-二、21・35・44・57番地の一を加える」
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仮庁舎の住所に、現在の本庁舎の住所となる「平字梅本21」が初めて追加されました。いわき市誕生における最大の難問であり、市民の最大の関心事であった新庁舎の建設場所は、多くの議論を経てようやく正式に決定しました。

02_06市役所本庁舎落成・テープカット(昭和48年3月、いわき市撮影):中央の大和田市長のほか、木村県知事、鈴木市議会議長、設計・施工2業者の社長が庁舎正面玄関を向いてテープカットしました 同定例市議会の会期中、庁舎建設特別委員会が設置され16名の委員が選任されます。いよいよ、庁舎の規模や予算などの基本構想の審議が始まり、地下1階、地上8階(塔屋2階建て)、議会棟は別棟2階建ての設計が固まりました。
 起工式は昭和46年6月5日、そこから1年9か月の大工事が行われ、新庁舎は昭和48年3月20日に落成式を迎えました。前面ガラス張り(「カーテンウォール」と呼ばれた)の当時としては近代的なデザイン、延べ面積23,300平方メートル、高さは最も高いところで38メートル、市庁舎としては県内最大、広いいわき市のシンボルにふさわしい建物が初お目見えとなりました。
 平市民会館での盛大な式典と玄関前でのテープカットの後、落成式の出席者のうち約1,000人が参加して真新しい庁舎の見学会が行われました。新聞の見出しでは、見学者が「“すばらしい”を連発」とか、4台のエレベーターについて「8階に15秒でスルスル…と」などと、感嘆の見出しが打たれました(昭和45年3月20日付『いわき民報』)。
 落成式を終えると、新年度に間に合うよう庁舎の引っ越しが行われ、仮本庁舎の部署と、それまで分散を余儀なくされていた議会事務局、水道部、教育委員会事務局、社会福祉事務所などの部署が移転し、昭和48年4月2日から新庁舎での業務を開始しました。また、このとき平支所(現在の文化センターの場所にあった平市役所を転用していた)が廃止となり、平地区の支所業務は本庁に吸収されました。

 市発足から6年5か月、大和田市長の「時期が到来」の発言から3年8か月という長い時間をかけて多くの人の思いと議論により現在の場所に建設された、いわき市役所本庁舎。今年3月に44歳の誕生日を迎えようとする今日も、市民の皆さんの行政サービス拠点としてがんばっています。来庁された際には、建設当時のことに思いをはせていただけると、庁舎も喜ぶかもしれません。

⇒⇒本庁舎落成を記念して、市の花「つつじ」が制定されました。くわしくは、こちらから。
http://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1001000004278/index.html

 その他の写真

 02_07市役所本庁舎の市民課窓口(昭和60年4月、いわき市撮影):”市民を待たせない・歩かせない”「総合窓口サークル」方式を実現。全国でもめずらしい形態だったそうです

 02_08市民課模写電送装置(昭和40年代、いわき市撮影):当時、最新鋭!本庁舎内で文書のやり取りを行うための装置。FAXのような仕組みでやり取りができ、1階窓口で多くの手続きを受け付けられるようになりました

02_10新庁舎落成記念品・印鑑ケース(いわき市撮影):凹凸加工で表現された本庁舎外観が銀色にめっき塗装されています。皆さんのお手元で今でも使われていたりしますか?

〔担当〕 市制施行50周年記念誌プロジェクト

このページに関するお問い合わせ先

総合政策部 広報広聴課

電話番号: 0246-22-7402 ファクス: 0246-22-7469

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