令和7年2月3日 教育長だより Vol.47 『子どもに委ねる』
更新日:2025年2月3日
年末にある映画を観ました。公立小学校を舞台にしたドキュメンタリー映画です。
掃除や給食の時間、運動会・卒業式に向けた練習など、日本の多くの小学校で見られる光景を収めた映画です。
子どもの豊かな表情や、悩みながらも情熱的な教師の姿を自然な形でとらえていて、とても印象に残りました。
人によって評価がわかれるような場面もあり、日本の学校教育の在り方について考えさせられる内容でもありました。
良くも悪くも、日本の小学校の特徴をうまく切り取っている映画だと思いました。
仕事柄、いわき市の学校と比べながら鑑賞しましたが、掃除の場面だけは本市の方がより特徴的だなと感じました。
掃除に対する姿勢がしっかりしていて、なんだか“ひたむきさ”を強く感じてしまうのです。
古い校舎でも床はピカピカです(市内小学校)
いわき出身の方々には説明不要だと思いますが、市内の多くの小中学校では掃除の際、児童生徒の脚に“ひざあて”を装着しています。
膝をついて丁寧に床を磨きこむことが由来になっていたのではないかと思います。
掃除の開始と終了時にみんなで整列する点も規律がしっかりしています。
私自身は、このような習慣を見聞きしたことがなかったため(私、岡山育ちです)、いわき市に赴任してびっくりしました。大げさかもしれませんが、この掃除のスタイルは、いわきのアイデンティティを象徴しているように思います。
“ひざあて”を装着している児童(市内小学校)
そんな本市の中でも新しい動きが見られます。
ある中学校では、生徒会が主体となって学校内の決まり事や活動方針を決める取り組みが進められています。
先生たちは生徒会活動に基本ノータッチ。唯一、校長先生が学校側の窓口となり、生徒会役員と交渉し、合意したことを実行するそうです。
この活動を通して、「掃除の時の“ひざあて“装着は生徒自身で決める」というルールに改めたそうです。
この取り組みを知り、私は大きな可能性を感じました。
“ひざあて”の良し悪しではありません。なにかと大人(先生)が手を出しがちな生徒会活動の中で、「なぜ装着するのか」「どうすべきなのか」ということを生徒自身が考え議論することが素晴らしいと思ったのです。
現在の日本の学校教育では、教育活動全般において「主体的・対話的で深い学び」という理念が掲げられています。
くだけた言い方にすると、「自分の頭で考え、人と対話しながら、物事を深く理解する」ことを目指しています。
従前どおりの活動の中では、こうした理念の実践は難しいと感じてしまうこともありますが、その生徒会活動の取り組みを知ると、既存の教育活動を“磨きこむ”ことでも実践できるのではないかと感じました。
大切なのは、「大人があれこれ指示し、手を出そうとする」のではなく、「何をするか、どうやるかを子どもに委ねてみる」という視点です。
このちょっと“引いた”視点を普段の教育活動に少しだけ加えてみることで、子どもたちの学びが生き生きとしてくるのではないでしょうか。
たまたま観た映画と小中学校での清掃活動からヒントを得たわけですが、どのような活動でも、大人の視点の持ち方が重要だと感じています。
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