令和6年7月5日 教育長だより Vol.33 『子どものための授業スタイル』
更新日:2024年7月5日
もうすぐ七夕ですが、皆さんは何を願いますか。
先日訪問した中学校の教室では、七夕にちなんで生徒たちが願い事を書いて飾っていました。
その中には「学力があがりますように」という願い事もあり、我々がしっかりかなえてあげなければと思いました。
ということで、今回は、各学校でも取り組まれている学力向上に関して取り上げます。
市教委の学力向上チームでも様々なデータを分析していますが、そこで明らかになった重要な点をご紹介したいと思います(学校の先生向けの内容になります)。
【小学生と中学生で学力の伸び方に変化があります】
小・中学生の学力に関しては、国や県で実施される学力調査の結果が参考になります(※)。
※各種学力調査は、学力の一部分や教育活動の一側面しか捉えられないことに留意する必要があります。
まず、全国で毎年実施される「全国学力・学習状況調査」の結果を見てみます。
この調査は、国語や算数などの教科学力と、子どもたちの生活習慣や学習の様子について調べています。
教科正答率の比較では、本市の小学生は国語が全国平均とほぼ同じ、算数が少し苦手ですが年々持ち直しています。中学生は国語が全国平均より少し低く、数学・英語はだんだん差が広がってきています。(表1参照)
小学6年生と中学3年生だけの調査なので、進級に伴う学力の変化はわかりません。
ただ、中学生の方が全国平均との差が大きいことがわかります。
《表1:全国学力・学習状況調査の過去3年間の平均正答率》
次に本県独自で実施する「ふくしま学力調査」の結果を見てみます。
この調査は、他県との比較はできませんが、小学4年生から中学2年生までの進級に伴う学力の「伸び」を追跡して見ることができます。
その推移を見ると、小学生から中学生になると学力の「伸び」が緩やかになっていることが示されています。(グラフ1参照)
《グラフ1:学力の変化(令和5年度中学2年生平均、算数・数学)》
※「ふくしま学力調査(令和元年~5年度)」のデータを元に本市作成
※令和2年度(小学校5年生時)はコロナ禍のため中止
さらに、この学力の伸び方を階層別に分析すると、学力の伸びが緩やかになるのは、中間層の子どもたちであることがわかりました。(グラフ2参照)
《グラフ2:階層別学力の推移(令和5年度中学2年生、算数・数学)》
※「ふくしま学力調査(令和元~5年度)」のデータを元に本市作成
※令和2年度(小学校5年生時)はコロナ禍のため中止
これらの分析を総合すると、どうやら中学生時の学力の伸び方に課題があるということと、特に中間層の子どもたちへの手立てが重要ではないかということが推測されます。
【着目すべき数値】
では、何をすればいいのでしょうか。
「中学生時」に「中間層」の伸び方が課題であるということは、学校生活が学力に大きく影響しているのではないかと考えました。
その中でも学力に直結するといえば「授業」です。
そこで、この「授業の形態」に関するデータに着目してみました。
「全国学力・学習状況調査」では、子どもたちが受けた授業の形態についても調べています。その分析によると、自分で考えたり、他の人と話したりするような授業を日常的に受けている子どもたちは、教科学力が高いことがわかっています。
これは、自分の考えを言語化したり、他者の考えを聞いたりすることで、思考力や表現力が高まるからだと考えられます。
《表2:授業形態の比較(中学1,2年生時に受けた授業に関する質問)》
※「令和5年度全国学力・学習状況調査 生徒質問紙調査」のデータを元に本市作成
この点に関して本市中学生の数値を見ると、やはり、こうした授業を受けていると答えた割合が全国平均より低くなっていました。(表2参照)
このことから、本市の中学生の学力の伸びを高めるには、自分で考えたり、他の人と話したりするような授業をもっと増やすことが必要だと言えます。
本市では、今年からダッシュボードシステムを導入し、各学校においても学力調査やアンケートの分析データを見ることができるようになりました。
子どもたちが学校の授業をどのように感じているのかも、このシステムで数値化して見ることができます。
こうしたシステムを活用しながら、子どもたちが授業に積極的に参加できるよう、先生方御自身の授業スタイルや方法を振り返っていただければと思います。
本市の子どもたちの学力を一緒に伸ばしていきましょう。
画像:ダッシュボードシステムの「調査間クロス_学校別_HOME」画面を加工
《参考資料》
国立教育政策研究所「令和5年度全国学力・学習状況調査 報告書」令和5年8月
(https://www.nier.go.jp/23chousakekkahoukoku/report/question.html)
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