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令和6年3月8日 教育長だより Vol.25 『価値観の変化』

更新日:2024年3月8日

みなさん、こんにちは。

昨日で市議会2月定例会が閉会しました。

今定例会では来年度予算の審議をはじめ教育分野でも様々な施策を進めることが決まりました。

中でも大きな取組として、本市小中学校の特別教室にエアコンを整備することになりました(今後2カ年で半数程度の特別教室に設置)。

 

近年の記録的な猛暑の中、学校現場のみならず保護者や各方面の方々からもたくさんの要望が寄せられ大きな課題となっていましたが、おかげさまで財源措置の目途も立ち、ようやく着手することができます。

学校によっては来年まで待っていただくことになりますが、できるだけ設置工事を急ぎたいと思います。

 

夏はエアコンが無いと数分も居られないほど暑いです(市内小学校の特別教室 令和5年7月)

 

実は、学校のエアコンについては私自身の職歴の中でも関わりがありまして、今回はそのことを紹介します。

まずは20年以上前の出来事です。

私が文科省で勤めだして数年経った頃のことです。

学校の施設整備を所管する部署にいて、自治体向けの補助金を担当していました(一番下っ端の係員でした)。

 

その時の偉い方(大臣ですが・・)の発案で小中学校にエアコンを整備しようということになり、そのための経費を文科省の予算の中に盛り込むことになりました。

当時、国の補助制度ではエアコンの工事を原則認めておらず、公立学校の教室にはほぼ未設置だったので、かなり意欲的な取り組みでした。

 

ある日突然、一般の方が私のいる部署に闖入!してきて(当時はセキュリティが緩やかだったのかな)、なんと「学校にエアコンなんかけしからん!」とすごい剣幕で迫ってこられました。

文科省が学校へのエアコン整備を推進すると知って直接抗議に来たのです。

子どもが軟弱になるとか、贅沢だとかそんな主張だったと思います。

 

見知らぬ人から直接詰め寄られたのはこの時だけですが、メールや手紙でもエアコン整備に反対する意見が職場に寄せられたと記憶しています。

結局、厳しい予算査定もあり、その当時の予算では計上することができませんでした。

当時の価値観では「学校にエアコン」は時期尚早だったのかもしれません。

 

次は2018年のことです。

この年の夏に愛知県の小学校で児童が熱中症で亡くなる事案が起こりました。

それがきっかけとなり、熱中症対策として全国の小中学校で一気にエアコンを整備することとなりました。

その時も私はかつてと同じ部署にいました。

 

公立小中学校の普通教室は全国で約38万室もあります。当時のエアコン設置率はようやく5割を超えるかどうか。

これを100%近くに上げるにはあと何万室整備すべきか、全国自治体の整備計画とにらめっこする日々で、無理難題な作業を自治体にお願いしたりもしました。

ただ、この頃には学校のエアコン整備に反対する意見に触れることはありませんでした。

もっと早く整備しろとの声が圧倒的でした。

 

ともかく、この年以降に公立小中学校のエアコン設置率が急上昇し、現在では普通教室で概ね100%(95.7%)、特別教室で6割強の設置率です(2022年9月 全国平均値)。

都市部の学校では体育館への整備も進んでいるようです。

怒鳴り込まれた時とは真逆の状況になったわけです。

 

【グラフ:公⽴⼩中学校の空調設置率の推移(全国)】 

出典:「公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況 令和4年度」(文部科学省)のデータを参考に作成

 

同じような話はエアコンだけではありません。

例えば学校のトイレ。

かつては和式便器がスタンダードでしたが、現在はどんどん洋式に切り替えられています。

10年ほど前には、「しゃがんだ方が足腰が鍛えられる」とか「いざというときに和式でも用を足せるよう和式便器を残すべし」という言説をよく聞きましたが、今では説得力がなくなっている気がします。

このように10年単位で振り返ると、世の中の価値観も結構変わってくるものなんだと実感できます。

 

画像:文部科学省「令和2年度文部科学関係補正予算 事業別資料集(公立学校施設の衛生環境改善)」から抜粋

 

さて、現在の教育現場でも新しいモノや概念がたくさん入ってきています。

例えば、ギガスクール構想で一斉に配備したタブレット端末等のICT機器。

これらの活用は学校によって度合いに濃淡が見られます。

まだ浸透しきっているとは言えない(賛否両論のある)価値観ではないでしょうか。

ただ、エアコンやトイレがそうであったように、10年も経てば“あらゆる場面での活用が当たり前”の価値観になっているかもしれません。

価値観は不変だと思っていると、あとになって「あれ?気づくとウチだけが遅れてる!」なんて状態になってしまう恐れがあります。

歳を重ねた我々大人こそが価値観の変化に柔軟であるべきだと、過去を振り返りながら認識を強くしたところです。

 

 

 

《参考資料》

文部科学省サイト:「公立学校施設に関する調査」

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1334433_00001.htm

 

このページに関するお問い合わせ先

教育委員会事務局 教育政策課

電話番号: 0246-22-7541 ファクス: 0246-22-7595

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