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『いわきニュータウン(2)(緑地)』(平成30年4月11日市公式Facebook投稿)

更新日:2018年4月11日

いわきの『今むがし』Vol.92

(上)まったく異なった背景を持つ二つの緑地を、中央台高久の上空から西方に向かって見る-中央の緑地が「県立いわき公園」、奥の緑地が「中央台緑地」-〔平成8(1996)年10月、いわき市所蔵〕
(下)吉野谷鉱泉の施設〔昭和54(1979)年12月、いわき市撮影〕

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 昭和6 (1931)年6月4日付の『常磐新聞』に次のような記事を見ることができます。
「平から金十銭を奮発して、小名浜行の自動車に乗る。行くこと十五分位で飯野村立学校(現平第五小学校)から程遠からぬ所、面白き岩山の屹立(きつりつ)する前に湯場の案内標が立っているのが目につく。二丁余の畦道(あぜみち)伝いに山麓へ出る約一、二丁経道を歩む頃、ホーホケキョウと鳴く鶯の声が聞こえた。(中略)全山を渡る人気爽清にして夢幽の境に入る飯野山中の初夏の情景。途中清麗の気を欲しいままにし、数町を行けば其所には滾々(こんこん)とし泉湧く『よしのや温泉』がある」
 この場所は沢の奥で日当たりが良くなかったことから、昭和8 (1933)年頃、日陰の場所から田んぼを埋め立てて、現在地に移築しました。
 泉源は施設から歩いて5分ほどの山中にあり、杉や竹林が林立する通称「湯神様」と呼ばれている場所から、冷泉(5℃程度)をパイプで引き込み、沸かしています。この吉野谷鉱泉は、リウマチや神経痛などに効能があるとして遠方からも客が訪れ、江戸時代からの悠久の期間、湯を生み出してきました。
 この鉱泉に大きな変化をもたらしたのが、吉野谷鉱泉を含む、周辺の緑地(14.3ha)がいわきニュータウン建設計画に組み込まれたことでした。
 一方、いわきニュータウンには、この緑地より大きい「県立いわき公園」(71.3ha)が計画されました。
 かねてから福島県は、県内4地区に大規模都市公園「みんなの広場」構想を進めており、浜通りへの建設候補地としてニュータウン構想と重なり合って具体化していきます。ニュータウン予定地には「神下上(かのりかみ)と「神下下(しも)」と呼ばれる二つの農業用調整池が配置されており、これを防災調節池としても利用することにより、地域の自然やこれまでの生活環境を活かした都市公園形成につなげようとしました。公園設置は、いわきニュータウン構想の具体化(昭和46年3月発表)と並行した都市公園づくりとして具体化していくことになります。

(上)住宅に囲まれたなかに存在感を示す二つの緑地〔平成27 (2015)年12月、いわき市撮影〕
(下)吉野谷鉱泉〔平成22(2010)年4月、いわきジャーナル撮影〕

20180411-2 吉野谷鉱泉周辺の環境変化にとどまらず、存亡の危機にさらされたのは、いわきニュータウン建設が具体化するなかで明らかになります。当初市の計画案では緑地帯14.3haとして位置づけされていたのですが、具体的な事業主体となる地域振興整備公団常磐支部案は昭和52 (1977)年5月、周辺住宅と温泉の落差を少なくする防災上の観点から約3haとするという案を示したことから、“湯脈が断たれる”として、「吉野谷緑地・同鉱泉を守る会」が結成されました。この問題は長期化して対立構図に発展し、簡易裁判所の調停にまで持ち込まれました。
 その一方で、市を交えて話し合いが続けられますが、吉野谷鉱泉は緑地以外に住宅造成対象地に土地を保有していたこともあって容易に解決に至りませんでした。その間、この区域を除くニュータウン建設は進み、住宅化されていきます。
 こうした状況下、鉱泉所有の住宅化予定の飛び地と鉱泉周辺の山林を置き換えすることによって「中央台緑地」14.3haを確保できることで合意に至り、平成4年(1992)2月、両者の間で円満に調印が行われました。
 瀟洒(しょうしゃ)な住宅が並ぶ一角から入ると、別世界ともいえるような樹林が視界に広がります。さらに、歩みを進めると、出現する吉野谷鉱泉の建物。まさに周囲から隔絶された秘湯ともいえる存在です。
 一方、県立いわき公園(71.3ha・東京ドームの約15倍)の建設については、昭和48 (1973)年8月に都市計画決定。昭和56 (1981)年度から園路広場の建設工事に着手し、平成3 (1991)年6月に供用開始となった「メインエントランスゾーン(入口広場)」、「遊びのゾーン」がそれぞれ完成したのを機に「県立いわき公園」として開園しました。その後も全体整備が継続され、平成6 (1994)年8月にはフラワーガーデン、平成13 (2001)年5月に「森のわくわく橋」などが完成し、平成17 (2005)年3月に全面開園にこぎつけました。
(いわき地域学會 小宅幸一)

その他の写真

空撮・いわき明星大学、ニュータウン公共予定地を西側から見る(昭和62年8月、高萩純一氏撮影)

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空撮・吉野谷鉱泉、いわきニュータウン、市中央卸売市場を北東側から見る(平成5年1月、いわき市撮影)

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県立いわき公園のフラワーガーデン開場(平成6年8月、いわき市撮影)

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吉野谷鉱泉の位置を示す看板と解説(平成25年5月、いわきジャーナル撮影)

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