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『泉町下川字大剣』(平成29年6月14日市公式Facebook投稿)

更新日:2017年6月14日

いわきの『今むがし』Vol.72

八崎の懐に抱かれるようにたたずむ大剣集落~遠方から臨海工業地帯の工場群が迫ってくる~(昭和40年ころ 長谷川達雄氏撮影)

20170614-1 かつて、藤原川は河口付近で南方に大きく蛇行して海に注いでいました。
 その南側には、400mほど海に突き出た比高40~50mの海食崖・八崎(はっさき)が控えており、藤原川河口に位置する剣浜(つるぎはま)漁港と大剣(おおつるぎ)集落は、海に落ちる台地を侵食する小さな谷間に位置していました。それはまた、湾頭となる三崎(みさき)から数kmに及ぶ弓形の砂浜海岸が藤原川河口と背後の海食崖に吸い込まれるように、尽きるところでもありました。
 漁業関係者は河口域に船を浮かべ漁を行っていましたが、一方で河口域は砂採取の対象地ともなっていました。また、景勝地としても人気を集めました。小名浜海水浴場に比べ不便な地でしたが、下川(しもがわ)海水浴場は遠浅の海水浴場として知られました。夏季を中心に涼を求める人々の姿、河口域には貸しボートが浮かぶという光景が浮かんでいました。
 このようなのどかな風景が変わるきっかけとなったのは、臨海部の港湾整備と工業団地の造成でした。小名浜海岸においては1号ふ頭から西へふ頭建設が相次ぎ、昭和40年代初めには藤原川河口の右岸部を埋め立てて、石油コンビナート建設が持ち上がりました。
 当時、予定地となった海岸部では沿岸漁業が行われていました。大剣に住む26戸のほとんどが半農半漁で生計を立て、漁民は「剣浜漁業協同組合」に所属していました。水揚げ高は毎年1万5,000トン前後で、市内に存する13組合のなかでは最も水揚げ高の少ない組織でした。
 福島県は臨海工業団地造成のため、土地の確保と並行して漁業関係者との交渉に入りました。双方の関係者は解決に苦慮しましたが、昭和45(1970)年4月、福島県と剣浜漁業協同組合の意見が合意に達し、調印して漁業権の買い上げ、つまり漁場の放棄と、周辺漁業協同組合への補償が決まりました。こうして、昭和48(1973)年4月、剣浜漁業協同組合は解散しました。

大畑公園から見る石油タンクや工業地帯の工場群(平成29(2017)年6月 いわき市撮影)

20170614-2 小名浜臨海工業団地建設は、海側を第一期工事、山側を第二期工事と2段階に分けて行われました。
 第一、二期分の買収面積は合わせて386.5haに及び、昭和43(1968)年から昭和53 (1978)年にかけて行われました。地権者は合わせて450人にのぼりました。
 造成工事対象内にあって、住居の移転を余儀なくされた住民は、昭和47、48(1972、73)年にかけて、農業のできる営農団地へ移転しました。
 完成した第一期造成地内では、昭和48(1973)年から製油所建設の前提として油槽タンクの建設を進め、製油所の建設を待つばかりとなっていましたが、昭和48年秋に勃発した第三次中東戦争という思わぬアクシデントに見舞われ、計画の見直しを迫られることになります。
 すなわち、政局の不安が石油産油国からの安定供給に影を落とし、これに由来する「第一次石油危機」が石油の高騰を呼び、石油調達の見通しを危うくしたのです。日本全体としてみても、もはや石油に全面的に依存することは不可能となりました。これまでの石油精製計画は大きく転換を余儀なくされることになり、以後、石油コンビナートが成ることはなく、石油備蓄基地となる石油タンク群が並ぶだけになりました。
 二度にわたる石油危機で最初の構想が崩れ、造成計画も遅れましたが、昭和58(1983)年3月に第二期造成工事が完成しました。工場敷地は300.7haとなりました。
 石油関係の工場進出の断念もあって工場立地が不安視されましたが、昭和63(1988)年3月に常磐自動車道がいわきまで開通すると、小名浜臨海工業団地には工場進出が相次ぎました。自動車交通の発達や広域・高速交通輸送に対応した日産自動車いわき工場(平成6年操業)やいわき流通センター(平成2年設置)など、従来の構想とは異なるが交通の利便性もあって、工業団地は完売し、立地企業は約70社に及んでいます。
(いわき地域学會 小宅幸一)

その他の写真

藤原川河口を剣崎から見る(昭和40年頃、いわき市撮影)

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北西上方から見た小名浜臨海工業団地造成地と朝日・夕日長者遺跡(昭和46年 いわき市所蔵)

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