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『新川(クマミ温泉)』(平成27年11月18日市公式Facebook投稿)

登録日:2015年11月18日

いわきの『今むがし』 Vol.35

炭鉱の排湯によって登場した、新川の通称「クマミ温泉」 「昭和32(1957)年頃 長谷川達雄氏撮影」

昭和32年頃の新川・クマミ温泉

 新川は内郷地区の湯ノ岳を源流として、夏井川に合流する二級河川の都市河川ですが、昭和30年代まで沿岸には炭鉱がいくつも稼働しておりました。炭鉱からは河川へ石炭がこぼれ落ち、黒っぽい印象がありました。この石炭を拾って換金する人も多くいました。
 いわき地方の石炭産業のうち、最大大手が常磐炭礦株式会社でした。福島県と茨城県にかけ多くの鉱区を持ち、福島県側では良質で掘りやすい湯本や内郷でいくつもの炭鉱を開発。地下から掘った石炭を鉄道によって市場へ送り出していました。
 しかし、昭和20年代後半になると石油輸入が自由化され、安価な石油が輸入されるようになると、各炭鉱は価格競争のために採掘の効率化をめざすようになり、いくつもあった採炭坑口や排水口の集約化も進められていきます。湯本・内郷の地下の特徴は他の場合の地下水とは異なり、採掘の際に縦横無尽に走っている湯脈から生じる温泉水を排湯として廃棄しなければならない課題があったのです。
 

現在の新川 土地区画整理事業の施行によって新川沿岸は宅地化されています。橋梁は国道49号(平バイパス)です。「平成27年(2015年)年11月 いわき市撮影」

現在の新川・クマミ温泉跡地付近

 内郷地区では数か所あった排水坑口を御厩地内に集約して、県の河川敷占用許可を得て、新川に放流することにしました。
 それまでは、数あるなかの一つとして、従来から一部住民に野天風呂として利用されていたのですが、昭和32年(1957年)2月、集約の工事を終えた送湯管からは摂氏46度のお湯が滝のように川に注ぐことになって、状況は一変します。
 排湯は見方を変えれば、リウマチや神経痛に効く温泉。川岸に脱衣所代わりの掘っ立て小屋が次々と建てられ、最初は「御厩温泉」と呼ばれましたが、新聞報道や週刊誌で話題になると、「クマミ温泉」として人気を集めました。

温かい新川へ飛び込め(昭和30年代、長谷川達雄氏撮影)

昭和30年代の新川・クマミ温泉「クマミ温泉」の存在はさまざまな分野で、多くの思惑を生むことになりました。
 まず、この排湯をもっと大きく使用したいという考えでした。石炭産業が斜陽化している内郷市の場合は、観光と温泉施設で地域疲弊からの脱却を図る大きなチャンスでした。その後、昭和36年(1961年)には、観光振興をめざし平市や磐城市も排温水の再利用を関係当局に陳情するようになります。
 昭和32年(1937年)9月、「クマミ温泉」自体が法に抵触するという警告が出されます。農地事務所が農地法違反で関係者に休憩所の撤去を指示します。これに対し、公共性を挙げた擁護論も持ち上がりました。
 

内郷ヘルスセンター(昭和33年、長谷川達雄氏撮影)

昭和33年の内郷ヘルスセンター この間、内郷市は、さまざまな便宜を図ってきた常磐炭礦が内郷地区から撤退する方向性を示しているのを逆手にとる恰好で、この排湯を再利用すること、つまり常磐炭礦が“捨てたものを拾う”ということで同意を取り付け、さらに県から新川河川占用許可を得て、「クマミ温泉」東方の水田を買収して、急ぎ、昭和33年(1958年)7月に「内郷ヘルスセンター」をオープンさせました。
 内郷市と県、常磐炭礦の調整で成ったヘルスセンター建設によって、排湯の取り扱いに一定の方向が出ると、「クマミ温泉」は苦境に立つことになります。昭和33年7月、河川法、農地法、公衆衛生法、食品衛生法、旅館業法などに抵触するとして、関係官庁が撤去命令を出し、閉鎖の実力行使に出て、昭和34年(1959年)秋には姿を消しました。
 

御厩町・内郷ヘルスセンターを山から俯瞰(昭和30年代、長谷川達雄氏撮影)

昭和30年代の内郷ヘルスセンター その後、内郷市御台境鶴巻に会社などの温泉保養所が設立され、次に内郷市は排湯を一般市民に配湯することをめざし、昭和40年(1965年)2月に常磐炭礦などに陳情活動を展開します。しかし、この申し入れには常磐市や常磐炭礦、湯本財産区ともに難色を示しました。
 この問題は、いわき市合併と関わって大きなテーマとなっていきます。いわき市の合併に最後まで反対したのは常磐市で、その条件は「温泉は常磐市固有の財産」でした。ここには温泉に対して、再三にわたり周辺市が再利用を要望してきたことに対する常磐市の危機感がにじみ出ている、とみることができます。

その他の写真

新川・通称熊見温泉の実態視察(昭和41年12月、いわき市撮影)

昭和41年12月の新川・クマミ温泉

クマミ温泉の位置

クマミ温泉位置図

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電話番号: 0246-22-7402 ファクス: 0246-22-7469

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