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『常磐上湯長谷町梅ケ平』(平成30年1月24日市公式Facebook投稿)

更新日:2018年1月24日

いわきの『今むがし』Vol.87

写真1-1(上) 専用鉄道小野田線上から見る、中継地点の磐崎礦(昭和30年頃、大平喜一氏撮影)
写真1-2(下) かつて資材運搬軌道のあった場所は、当時は側線が配置-写真1-1の左側-(昭和30年頃、板井文男氏撮影)

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 明治時代初期、常磐(磐城と常陸にまたがる地域)地方では、零細炭鉱によって、阿武隈高地東縁に分布する石炭が掘削されていましたが、北海道や九州・筑豊に比べ熱カロリーが低く、市場では低く扱われていました。ところが、明治10 (1877)年に九州で西南戦争が勃発すると、九州からの石炭が供給されなくなり、熱カロリーの低い石炭も脚光を浴びることになりました。
 しかし、石炭採掘が露頭から深部に下るにつれて、排水、石炭巻上げなどの施設に拠らなければならず、機械化によって大量出炭するためには、大きな外部資本が必要となりました。
 湯本市街地の北西2km、湯ノ岳の麓に位置する小野田では、いわき地方の資産家によって明治14(1881)年からこの区域を掘削していましたが、地元資本だけでは限界があったことから、隣接区の保有者や地元の有力者の協力を得て、東京・横浜で事業を営んでいた浅野総一郎と連携。明治17(1884)年には磐城炭礦(株)が設立され、常磐地方で最初の機械採炭による小野田炭礦第一斜坑が開削されました。
 採掘された石炭を円滑に市場に運ぶためには交通機関の整備が必要となり、明治20(1987)年5月には、小野田-小名浜海岸まで約13kmの馬車による石炭運搬専用軌道(軌間762mm)が敷設されましたが、海上運搬には暴風雨などによる危険があったことから、明治30 (1897)年2月に日本鉄道磐城線(軌間1,067mm・現常磐線)の湯本駅が開設されると、炭鉱と湯本駅との間に石炭運搬専用鉄道(軌間1,067mm)が敷設され、陸上交通を通じて安全に市場へ運ぶことができるようになりました。
 磐城炭礦(株)は、海に向かって7~10度の傾斜で深度が増す石炭層に沿って掘削。昭和時代に入ると、上湯長谷字梅ケ平周辺にその中心を移行させ、専用鉄道の中継地を設け、磐崎礦として開削します。
 写真1-1は磐崎礦の石炭運搬専用鉄道上から、写真1-2は資材等の供する側線上から、それぞれ西方を見ていることになります。遠方の先端のとがった山は、石炭を掘る際に出た不用な岩石や砂を積み上げた人工の「ずり山」です。

写真2 市道沿いに立つ旧石炭積込場と専用鉄道から転化した市道。背後のずり山跡(平成30年1月、いわき市撮影)

20180124-2 小野田炭礦は、開発が早かったこともあって、炭層が枯渇するのも早かったのですが、専用鉄道途中の磐崎礦は、昭和40年代まで、常磐炭礦における主力鉱の一つとして稼働、その後は坑口の集約化によって、廃鉱となりました。
 専用鉄道は平成2(1990)年に、大半が市道宝海-斑堂線の敷地に転用され、現在に至っています。今、道路のかたわらに堅固な建造物が見えます。これだけを見ると、何の遺構かわからないかもしれません。
 この建物は石炭を積み込む場所、磐崎礦石炭積込場で、万石(まんごく)と呼ばれたものでした。この建造物の下には、本線から分岐した線路が引き込まれていました。
 石炭はこの建物の上部から引込線で待つ貨車に積み落とされ、積み終えると、何両もつないだ貨車を牽引した蒸気機関車で湯本駅に向かったのです。
この建物は、単なる建物遺構かもしれませんが、歴史的にみると、かつていわき地方の発展に大きく貢献した施設なのです。近年、これら歴史的な遺構は、近代化遺産、あるいは産業遺産として、新たな光が当てられ、注目されるようになり、これらをめぐって観光と学習を兼ねた「ヘリテージ・ツーリズム」として、一つの分野が獲得されるようになりました。
 いわき市には、このような施設が点在しており、磐崎礦石炭積込場跡も産業遺産と位置づけられる貴重な施設の一つといえます。
 新しい写真では、背後のずり山は歳月を経て丸みを帯びていますが、往時の面影を残しています。ずり山の高さは100m前後で、採炭当時、法的にこれ以上積み上げることはできませんでした。崩落する危険性があったからです。当時、ずり山の高さをみれば、炭鉱の盛衰がわかるといわれました。石炭量が増えれば、それだけ不用な岩石や砂などが出るからです。
 “山”には樹木が生い茂り、すっかり自然に還った山が歳月を感じさせてくれます。
(地域学會 小宅幸一) 

その他の写真

常磐炭鉱磐崎鉱ズリ山から(昭和33年10月、常磐興産所蔵)

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常磐炭鉱磐崎礦ズリ山(昭和33年10月、常磐興産所蔵)

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常磐炭礦専用鉄道小野田線沿いの梅ケ平、遠方に湯の岳を見る(昭和30年代、青柳美衛氏撮影)

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旧常磐炭礦磐崎礦の石炭積込場・右道路は専用鉄道跡(平成17年9月 おやけこういち氏撮影)

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地図1 常磐炭礦磐崎礦周辺〔1.50,000地形図 平(昭和26年応急修正)〕

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地図2 常磐炭礦磐崎礦付近(昭和33年)

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