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『遠野町』(平成26年10月1日市公式Facebook投稿)

登録日:2014年10月1日

【いわきの『今むがし』 Vol.7】

【上遠野市街を、西方の根岸に向かって見る〔昭和54年(1979年)5月、いわき市撮影〕】

昭和54年の遠野町

 中通りと浜通りを結ぶ重要な路線の一つに、主要地方道いわき-石川線があります。石川と湯本を結んでおり、御斎所街道とも呼ばれています。その名前の由来は、交通の難所である御斎所峠にちなんだものです。
 峠の前後には鮫川の峡谷が続き、道路はその流れに沿って断崖絶壁を削って山肌を縫うように、まず人と馬が通れるように整備されましたが、常に危険が伴う道路でもありました。
 江戸時代、峠を無事通ってきた旅人や荷馬車は、最初に商店が並ぶ上遠野でくつろぐことができました。逆にこれから峠越えする旅人は、上遠野で入念な準備をして、旅立ちました。
 地理的にみて、上遠野は入遠野や植田に向かう道路の分岐点でもあり、物資が交流する場所でもありました。街並みは道路に沿って細長く続き、官公署や旅籠屋、荒物屋などの各種商店が軒を連ね、季節ごとに暮市などが立ち、近郷近在から人が集まってにぎわいをみせました。
 明治時代以降、交通手段が荷馬車や荷車から自動車へ移行するなか、行政や地元民はトンネルの掘削、道路拡幅、落石防止などを施しながら屈曲の解消、道路拡幅、安全確保に努めてきました。
 昭和27年(1952年)には石川と植田の間に国鉄(現JR)バスが開通し、その中継地として、さらに福島交通のバスも上遠野まで乗り入れするようになり、交通の拠点としてもにぎわいをみせました。
 昭和45年(1970年)には全線の道路舗装が完成し、交通の円滑化が図られましたが、社会変化はさらなる道路改修を迫っていくことになります。
 さて、写真をみてみると、「上遠野分会30周年記念」という横断幕が見えます。とすると、交通安全協会上遠野分会の設立は昭和24年(1949年)ころです。戦後、次第に交通往来が盛んになって、全国的に交通安全が呼びかけられ市町村単位で設立されたものです。当時は、まだ上遠野村(昭和30年〔1955年〕に入遠野村と合併して遠野町)でした。

【主要地方道いわき-石川線遠野バイパスの開通式 〔平成11年(1999)4月 いわき市撮影〕】

平成11年のバイパス道路開通式

 平成15年(2003年)10月の1か月間、福島県の調査によると、小名浜港から市外に搬出された物資のうち、28%が主要地方道いわき-石川線を利用し、同じく搬入については73%が利用しました。特にコンテナなど大型車混入率(交通量に大型車が占める割合)は30%を超え、物流道路として大きな役割を果たしていることがわかります。
 このように自動車貨物輸送の増加傾向は、高度経済成長期はもちろん、それ以降も継続したことから、さらなる道路改修が求められました。行政はこれに応えて、物資輸送の円滑化によって地域産業の発展が図れるよう、順次主要地方道いわき-石川線の道路拡幅やトンネル掘削による急カーブ解消などに努め、大型トラックの通過を可能にして輸送時間の短縮化をめざしました。
 このなかで大きな課題となったのが、上遠野市街を通る従来の道路をどうするか、でした。道路沿いに家並みが続き、拡幅することはとても困難だったからです。検討の結果、既成市街の南側にバイパス道路を敷設することとなりました。
 この遠野バイパスは、全長約2.5キロメートル、道路幅員14メートルから15メートル、うち車道6.5メートルの規格で、昭和63年(1988年)度から事業に着手されて、平成11年(1999年)4月に全線が供用開始しました。

【昔のたたずまいを見せる遠野市街〔平成26年(2014)9月 いわき市撮影〕】

現在の遠野町

 主要地方道いわき-石川線遠野バイパスが平成11年(1999年)4月に開通したことにより、これまで遠野市街を通っていた自動車の多くは遠野バイパスを通るようになりました。
 バイパス開通によって、中通りと浜通りとの間を走る自動車の往来だけでなく、遠野地区内の移動もよりスムーズになりましたが、一方で遠野地区の一部の人々にとっては手放しで喜べない面がありました。「寂しくなっている商店街が、さらにさびれてしまう」「お客さんの流れがかわってしまう」などの懸念は、それまで郊外に新しい道路ができて中心市街が空洞化した例をみていたからです。特に、商店街の人々の心中は複雑なようでした。
 その一方で、バイパス沿いには、駐車スペースを大きく確保した商店が進出するようになりました。なかには、元の商店街からバイパスに移転して商売を再開した人もいます。
 日本全国でたえず繰り返されている、幾種類もの社会変化の波。道路と人の流れ、それを受け止める地域住民の思いもその一つでしょう。この例にかぎらず、生きていくうえでとどまることのできない私たちの生活。これを自分たちでどのように変えていくか、地域の力と私たち自身の力が試されているような気がします。

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